消費者の観光農園利用実態と選定基準


[要約]
観光農園を多く利用しているのは中高年齢層を中心とした「ゆとり」意識の高い消費者である。消費者は観光農園を選定する際、「もぎ取り体験の可否」、「農産物の味や価格」、「直売」、「景観」、「駐車場の広さ」等を重視している。
和歌山県農林水産総合技術センター農業試験場・栽培部
[連絡先] 0736-64-2300
[部会名] 営農
[専門]    経営
[対象]    
[分類]    指導

[背景・ねらい]
 近年、農村を訪れる都市住民の増加、農産物の価格低迷等を背景に観光農園経営に取り組む農家は増加している。これら観光農園では農業に接客業務等のサービス業である第三次産業的要素が加わるため、消費者ニーズを把握することが重要である。ここでは、「和歌山県農林水産業まつり(1997年9月)」と「和歌山県花と緑のフェスティバル(1998年2月)」の入場者に対して行った観光農園の利用状況等に関する消費者アンケート結果を基に、消費者の観光農園利用実態と選定基準を明らかにする。

[成果の内容・特徴]

  1. 観光農園に対する1世帯当たりの平均年間支出金額(交通費、入園料、土産品を含む)は 5,947円、平均利用回数は 1.4回であった。
  2. こうした観光農園に対する支出金額は、40代以上の年齢層で急激に増加する。観光農園は中高年齢層で多く利用されている(図1)。
  3. 「経済的なゆとり」意識や「時間的なゆとり」意識の有る消費者の支出金額は、「ゆとり」意識の無い消費者に比べて大きい(表1)。
  4. 支出金額と利用回数の近年の動向をみると、両項目とも「増加した」との回答が「減少した」との回答を大きく上回った。また、今後の利用についても、同様の結果が得られた。近年、観光農園需要は増加傾向にあり、今後も増加することが予測できる(表2)。
  5. こうした観光農園を消費者が選ぶとき、「もぎ取り体験の可否」、「農産物の味」、「農産物の価格」、「自然の中でのレクリエーションの可否」、「農産物直売の実施」、「周囲の景観」、「駐車場の広さ」等を重視している(図2)。食味の良い農産物の生産、園内での直売の充実、駐車場の整備、景観の保全等をすすめることが観光農園経営にとって重要なポイントである。また、同時に以上の項目に関する情報を観光農園の特徴として消費者に発信していくことが大切である。

[成果の活用面・留意点]

  1. 回答者が農業に関心の高い消費者層であることに留意する。

[その他]
研究課題名 : 紀北地域における野菜産地の生産・経営対策
予算区分   : 県単
研究期間   : 平成10年度(平成8〜10年)
研究担当者 : 光定 伸晃、辻 和良
発表論文等 : 消費者の観光農園利用実態とその選定基準、農業経営通信、No.198、10-13、1998.
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