- [要約]
- 中山間地域においても、集落営農型法人の保有労働力を十分活用していく形での作業別対応方式が確立できれば、農地の面的維持とともに、保有機械1台当りの稼働面積の拡大による米の低コスト生産が可能になる。
島根県農業試験場・企画調整部
[連絡先] 0853-22-6650
[部会名] 営農
[専門] 経営
[対象] 稲類
[分類] 行政
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[背景・ねらい]
- 島根県中山間地域においては、土地利用型農業の担い手として集落営農組織の役割が大きくなってきており、集落営農の維持と機能強化のために任意組合を法人化する動きが各地でみられる。そこで、既存の集落営農型法人の経営受託水田における作業別対応方式を調査し、法人が構成農家の保有労働力をどのように活用しているかを明らかにして農地の面的維持の手法を示すとともに、そこでの米生産費を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
- 経営受託水田の肥培管理作業では、各法人の保有労働力の量と質に応じた様々な作業分担体制がとられている。このうち、最も時間のかかる畦畔除草では、時間給による再委託や共同出役などのほか、土地所有者が行った場合に地代とは別に定額の管理手当を支払っている法人もある(表1)。
- 10a当り労働時間は平均23.1時間で県平均の半分以下であり、都府県の5ha以上層とほぼ同水準である。ただし、法人の調査データには畦畔の法面除草の時間も含めたことを考慮すれば、機械作業での作業効率は実質的に都府県の5ha以上層を上回っているといえる(表2)。
- 10a当り費用合計は平均78,868円で県平均の54%と極めて低く、都府県の5ha以上層と比較しても約2万円低く、低コスト生産を実現している(表2)。この要因としては、法人が集落の水田の大部分をカバーすることによって、保有機械1台当りの稼働面積が限界に近い面積に達していることがあげられる。なお、生産コストが最も低いA法人の60s当り費用合計は8,367円で、県平均17,852円の半分以下である。
[成果の活用面・留意点]
- 集落営農型法人の経営受託水田においては、農地の面的維持と米の低コスト生産が図られており、今後新たな担い手を育成する上での指標として活用できる。
[その他]
研究課題名 : 島根県における土地利用型担い手の類型化と成立条件の解明
予算区分 : 県単
研究期間 : 平成10年度(平成7〜9年)
研究担当者 : 竹山孝治
発表論文等 : 島根県における集落営農型法人経営の特徴と役割、農政調査時報、502号、2-10、1998.
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