ウンシュウミカン果実の運搬作業の軽労働化


[要約]
ウンシュウミカンの収穫果実の園内での運搬には小型運搬車を、貨物自動車への積み降ろしにはパワーハンドを用いることにより、心拍数の増加割合からみた作業負担は20%程度軽減され、運搬作業が軽労働化される。
和歌山県農林水産総合技術センター・果樹園芸試験場・施設営農部
[連絡先] 0737-52-4320
[部会名] 果樹
[専門]    機械
[対象]    果樹類
[分類]    普及

[背景・ねらい]
 急傾斜地ウンシュウミカン園では収穫果実の上下方向の運搬にはモノラックを用いているが、横方向は人力による抱え運搬に頼る場合が多い。収穫から出荷までの間に、コンテナの抱え運搬と積み降ろし作業は 5〜 7回にも及んでいる。
 そこで、25年生の興津早生が栽植されている傾斜地階段園で、樹冠の山側をヘッジングせん定し、小型運搬車が通行可能な幅65cmの作業道を設け、小型運搬車(クローラ外幅65cm、荷台外幅61cm、全長 177cm)、一輪車、パイプレール及びミニリヤカーを用いて収穫果実を園外に搬出する場合、並びにパワーハンドを用いて倉庫内でコンテナを積み降ろしする場合の作業負担軽減効果を検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. 収穫果実を園外に搬出する場合、作業道設置により、心拍増加指数からみた作業負担は軽減されないが、作業時間が20〜30%短縮される(表1)。
  2. 作業道が設置されている園では、コンテナを一カ所にまとめて置き、運搬車を用いて搬出する方法で作業負担が最も少ない(表2)。
  3. 今回使用したパワーハンドは、取り付け位置を荷台前方へ、また、アームは中央で折れ曲がるように改良した(データ省略)。
  4. パワーハンドを利用したコンテナの積み降ろし作業は、手作業に比べて、心拍数の増加割合が小さく、作業負担が軽くなる。この場合、男性の高齢者及び女性で作業負担軽減効果が大きい。ただし、作業時間は手作業の 2〜2.5倍要する(表3)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 作業道と運搬車を用いた軽労型運搬体系は堆肥の施用等にも適用できる。
  2. パワーハンドは倉庫内での積み降ろしだけでなく、園地での積み込み作業にも利用できる。園地で使用する場合、傾斜があるとアームが下方向に流れるので、できるだけ平坦な場所で使用する。
写真1 [具体的データ]

[その他]
研究課題名 : 急傾斜カンキツ園の樹形改善による省力小型機械化生産体系の確立
予算区分    : 地域基幹農業技術体系化促進研究
研究機関    : 平成10年度(平成 6〜10年)
研究担当者 : 前阪和夫、上野山浩司、尾崎 健、角田秀孝
研究論文等 : なし
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