- [要約]
- ウンシュウミカンの樹体の水ストレスの程度は、葉の萎れ角度によって診断できる。『葉のシオレメ−タ−』による葉の萎れ角度15度を指標とする水管理法は、夏季の果実肥大期のかん水開始時期を決定する簡易な技術である。
広島県立農業技術センタ−果樹研究所・常緑果樹研究室
[連絡先] 0846−45−1225
[部会名] 果樹
[専門] 栽培
[対象] 果樹類
[分類] 指導
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[背景・ねらい]
- ウンシュウミカンの高品質果生産のポイントは、夏秋期において樹体に適度な水ストレスを付与することである。しかし、適度な水ストレスと、それを簡便に把握できる指標は明らかにされていない。そこで、土壌の乾燥に対する樹体反応から適度な水ストレスを明らかにし、葉の萎れ角度を指標とする水管理法を確立する。
[成果の内容・特徴]
- 葉の萎れ角度は、土壌の乾燥と葉の水ポテンシャル(水ストレスの程度)に比例する(図1)。
- 満開後79日から乾燥(断水)処理を行うと、明期終了前(夕方)における葉の萎れ角度が約13度になる日(満開後81日)に、果実の日肥大量はゼロになる。さらに、明期(日中)における葉の萎れ角度が約15度を超える日(満開後82日)から、果実の日肥大量はマイナスに転じ、新根の根色値が4(黄土色)に変化する(図1)。以上のような樹体反応から、葉の萎れ角度15度の水分状態が、果実肥大の低下を最小にし、しかも新根を枯死させない最大の水ストレス(適度な水ストレス)、すなわち潅水適期であると判断される。
- 葉の萎れ角度を簡便に測定するには、『葉のシオレメ−タ−』を用いる。構造は、萎れ角度測定用の針金に、取り付け用の針金を巻き付けた簡易なものである(図2)。
- 『葉のシオレメ−タ−』は、満開後70日頃、十分に潅水を行った2日後の早朝に、地上1.5mの高さに発生している無着果春枝の先端葉に、1樹当たり2カ所、5樹に1樹の割合で取り付ける。三角定規を用いて、葉の先端と葉柄の基部を結ぶ線に対して、萎れ角度測定用の針金の伏角が15度になるように、取り付け用の針金を調整する(図2)。
- 潅水は、葉が午後1時頃に測定用の針金に接した日の翌朝(裂果防止のため)に行う。潅水量は1回当たり10mmとし、収穫時まで繰り返す。この水管理法は、農家のハウス栽培で実用性が高いことが確認されている(表1)。
[成果の活用面・留意点]
- 『葉のシオレメ−タ−』が、防除などの管理作業によってずれないように留意する。
- この技術は,露地及びハウス栽培で活用できる。
[その他]
研究課題名 : 中高年・女性に適した果樹園の快適マネ−ジメントシステムの開発
予算区分 : 地域重要新技術
研究期間 : 平成10年度(平成6〜10年)
研究担当者 : 中元勝彦、平尾 晃、湯浅哲信、中谷宗一
発表論文等 : ワセウンシュウの葉の調位運動を利用した水管理指標が樹体および果実形質に及ぼす影響、園学雑67別2、194、1998.
ウンシュウミカンにおける果実肥大期の潅水指標、第30回広島県立農業技術センタ−研究成果発表会要旨集、61-66、1998.
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