カキ‘刀根早生’ハウス栽培果実の脱渋方法と追熟特性


[要約]
カキ‘刀根早生’ハウス栽培では収穫後、果実からのエチレン生成量と呼吸活性が増大するのとほぼ同時に軟化する。樹上脱渋処理果実は炭酸ガス脱渋処理果実に比べて収穫後の軟化の時期は1日遅延させる程度である。
和歌山県農林水産総合技術センター 果樹園芸試験場 紀北分場
[連絡先] 0736-73-2274
[部会名] 果樹
[専門]    生理
[対象]    果樹類
[分類]    研究

[背景・ねらい]
 ハウス栽培の‘刀根早生’は炭酸ガスによるCTSD(Constant Temperature Short Duration)脱渋処理(一定温度、炭酸ガス95%以上の密閉条件下での脱渋方法。以下CTSD脱渋とする)後、短期間の内に軟化し、大きな問題となっている。
 現時点での対処法である固形アルコールを用いた樹上脱渋処理は、収穫10〜14日前に処理し、収穫後すぐに流通販路にのせることが特徴である。そこで、この樹上脱渋処理果実の収穫後の追熟特性についてCTSD脱渋処理果実と比較した。

[成果の内容・特徴]

  1. 8月23日に果実を収穫し、CTSD脱渋処理を行った。また同じ日に樹上脱渋処理果実を収穫した。
  2. エチレン生成のピークは無処理果で収穫後3〜4日目、樹上脱渋果で4日目、CTSD脱渋果で5日目であり、いずれもその後減少し、収穫7日目にはほぼ同じ値となる(図1)。
  3. 呼吸活性の変化はいずれもほぼ収穫後5日目にピークに達し、その後減少する。呼吸活性量は無処理果で最も多く、ついでCTSD脱渋果で、樹上脱渋果で最も低い(図2)。
  4. 樹上脱渋処理果の軟化発生は、収穫後4日目で無処理果やCTSD脱渋果に比べて1日遅い(図3)。しかしすべての果実で収穫後3〜6日の間に急速に軟化果実が増え、この期間と前後して、エチレン生成や呼吸活性の増大が認められる。

[成果の活用面・留意点]

  1. 樹上脱渋処理果実で軟化が抑制されるのは、CTSD脱渋果実に比べて1日程度である。
  2. 樹上脱渋処理果実は、収穫後すぐに流通販路にのせることにより、流通期間中の日持ち性向上効果が得られていると思われる。

[その他]
研究課題名 : ハウス‘刀根早生’の軟化防止対策
予算区分    : 県単
研究期間    : 平成10年度(平成6〜10年)
研究担当者 : 播磨真志、北野欣信
発表論文等 : なし
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