幼果期の低温によるニホンナシの果実肥大不良とGA3 ペーストによる果実肥大効果


[要約]
幼果期(満開後20〜50日)の平均気温が平年値よりも1〜2度低温の年には、5月末にジベレリンペースト(GA3 2.7%含有)を果梗塗布すると、低温による果実肥大の不良を軽減することができる。
鳥取県園芸試験場  果樹研究室
[連絡先] 0858−37−4211
[部会名] 果樹
[専門]    栽培
[対象]    果樹類
[分類]    研究

[背景・ねらい]
 1995年の鳥取県におけるニホンナシ「二十世紀」の果実の大きさは、2L以上の割合24%(平年50%)で小玉果が著しく多かった。この主な原因は、5月中旬から6月中旬(人工受紛日4月20日後20〜50日頃)の低温(平均気温が平年値に比べ1.4℃低い)により、果実肥大が低下したためと考えられた。
 そこで、この気象条件をガラス室内で人為的に再現すると共に、低温による果実肥大不良の防止対策として、「ゴールド二十世紀」に対するジベレリンペースト処理の効果を検討する。また、秋期(10月15日)に全葉摘葉樹をつくり、貯蔵養分の少ない樹に対する低温及びジベレリンペースト処理の効果を検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. 人工受粉後25日目から30日間低温処理(平年値に比べ1.6℃低い)することにより、果実肥大が劣る(表1図3)。
  2. 低温処理果実に人工受粉50日後(通常の処理適期は35〜40日後)、ジベレリンペーストを果梗に塗布すると、果実肥大効果があり、常温区の無処理果実と同等の果重となる(表1図3)。
  3. 前年の秋期に摘葉した樹に低温処理すると、果実肥大が著しく劣り、ジベレリンペースト処理をしても果実肥大効果は小さい(表1図3)。
  4. 糖度については低温処理及びGA処理による差が認められない。熟期は低温処理によりやや早まるが、収穫時期を遅らせても常温区の果実重量より劣った(表1)。
  5. 以上のように、人工授粉後に平均気温が低く経過し、小玉果が増加すると判断される年は、通常の処理適期より遅れても人工授粉50日後頃までにジベレリンペースト処理を行えば、平年の無処理果実程度の果実を収穫することができる。また、貯蔵養分が少ないと考えられる樹ではジベレリンペーストによる肥大効果が小さいので、常に貯蔵養分を高く維持する掛体の管理が重要である。

[成果の活用面・留意点]

 秋期摘葉処理樹では効果が小さいので、病害虫防除、適正着果、9月施肥等を励行し、常に貯蔵養分を高く維持する栽培管理が必要である。「ゴールド二十世紀」を使った試験であるが「二十世紀」にも適応できるものと考える。
図1図2 [具体的データ]

[その他]
研究課題名 : 果樹の根園環境改善と生育制御による高品質果実の持続的安定生産技術の確立
予算区分   : 地域重要新技術
研究期間   : 平成10年(平成8〜9年)
研究担当者 : 井上耕介、池田隆政、中島正人 
研究論文等 : 幼果時の低温がニホンナシゴールド二十世紀の果実品質に及ぼす影響、園学中四国支部要旨37、18、1998.
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