酵素法による炭水化物の簡易定量法


[要約]
超音波洗浄機利用による抽出、ポリアミドによる抽出液の清浄化、ならびに酵素法による糖定量法を組み合わせて簡便迅速な糖及びデンプンの定量法を開発した。糖は、4種類の糖の分別定量又はこれらの合量値が測定できる。
山口県大島柑きつ試験場・環境研究室
[連絡先] 08207-7-1019
[部会名] 果樹、生産環境(土壌・気象)
[専門]    肥料
[対象]    果樹類
[分類]    普及

[背景・ねらい]
 炭水化物の分析は、煩雑で熟練を要し時間がかかるため、あまり行われていない。簡易な炭水化物分析法として、主に食品分野を対象にした酵素法があり、作物体への応用が試みられている。しかし、適切な前処理を施さないと測定誤差が大きいため、いまだに一般的な作物体用の炭水化物分析法とはなっていない。そこで、簡便な前処理法及び抽出法を開発し、これに適切な酵素法を組み合わせて簡便迅速な作物体用の炭水化物分析法を確立する。

[成果の内容・特徴]

  1. ポリアミドが充填された内径10oのガラス管(クロマト管)に抽出液を通すことにより、液を透明にできる。この処理は、最初の2mlを除くと糖濃度に影響しない(表1)。
  2. 槽内温度50℃の超音波洗浄機を用いることにより、簡易に糖の抽出ができる。本法と80%熱エタノールを用いた常法を比較すると、両法の抽出糖含量に差はみられない(4種類の糖の合量値)。また、デンプン分析用に80%エタノールを用いて糖の抽出・除去を行った場合、試料中のグルコースは2回の抽出操作でほぼ完全に除去できる(表2)。
  3. 上記の前処理及び抽出法をヘキソキナーゼ・G6PDH系の酵素法(試薬をセットにした市販商品名:Fキット)と組み合わせることにより、デンプンと4種類の糖(マルトース、シュークロース、フルクトース、グルコース)を測定できる。糖は、分別定量又は、これらの合量値が測定できる。
  4. 酵素法の糖測定値(合量値)は、常法(熱エタノール抽出・1.4N塩酸による分解・ソモギーネルソン法による定量)の値と高い相関があり、常法の約80%の値を示す(図1)。又、分別定量値は、液クロ測定値と良く一致する。
  5. 酵素法によるデンプンの測定値は、常法(熱エタノールによる糖除去・酵素法によるデンプンの分解・ソモギーネルソン法による定量)の値と良く一致する。
  6. 酵素法は簡便迅速で、常法と比較すると糖は約1/10、デンプンは約1/5の時間で分析可能である。

[成果の活用面・留意点]

  1. 糖の抽出時には、ガラス棒等で、適宜良く攪拌することが重要である。
図2 [具体的データ]

[その他]
研究課題名 : 中高年・女性のための快適マネージメントシステムの開発
予算区分    : 地域重要新技術
研究機関    : 平成10年度(平成6〜10年)
研究担当者 : 大田 勉
発表論文等 : なし
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