物理的防除体系によるキスジノミハムシの被害軽減技術


[要約]
ミブナ等の雨よけ栽培の被覆資材に近紫外線カットフィルムを利用し、畝立て後に太陽熱土壌消毒を行い、加えて0.8o目合い以下の防虫ネットでトンネル状に被覆することにより、キスジノミハムシの発生を抑制し、被害を軽減できる。
京都府農業総合研究所・環境部
[連絡先] 0771-22-6494
[部会名] 生産環境(病害虫)
[専門]    作物虫害
[対象]    葉菜類
[分類]    普及

[背景・ねらい]
 登録農薬がほとんどないミズナ、ミブナ栽培では、害虫防除のため1.0mm目合いの防虫ネット等によるトンネル被覆栽培が行われているが、侵入を防止するには不十分である。また、連作するとキスジノミハムシの幼虫や蛹が土中に残り、トンネル内で発生する。
 そこで、雨よけハウス下における防虫ネットによるトンネル被覆栽培においてキスジノミハムシの物理的防除体系を確立するため、各種防虫ネットの侵入防止効果や近紫外線カットフィルムの侵入抑制効果、太陽熱土壌消毒による羽化防止効果等について検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. 畝立て後に太陽熱土壌消毒を14日間行うと、土壌の乾湿に関係なくキスジノミハムシ成虫の食痕数は顕著に減少するが、7日間では効果が低い(図1)。
  2. ハウスに390nm以下の波長の光を透過しない近紫外線カットフィルムを展張すると、一般農業用ビニルフィルムに比べてキスジノミハムシ成虫の被害を抑制できる(図2)。
  3. 防虫ネットの目合いと成虫の通過率との関係は、1.0o目合いではすべての個体が通過するが、0.8o目合いでは2〜3%とほとんどの個体の通過を阻止でき、0.6o目合いでは完全に通過を阻止できる(表1)。また、雨よけハウス下で0.8o目合い以下の防虫ネットでトンネル状に被覆すると、1.0o目合いに比べて顕著に被害が軽減される(図2)。
  4. ミブナ等の雨よけ栽培において、近紫外線カットフィルムと0.8o目合い以下の防虫ネットによるトンネル被覆に太陽熱土壌消毒を組み合わせると体系処理効果が高い。

[成果の活用面・留意点]

  1. 太陽熱土壌消毒による立枯性病害と雑草防除には、施肥・畝立て後に多湿状態で7日間被覆し、消毒後に畝面をかくはんしないことにより、併用効果が期待できる。 
  2. トンネル被覆の裾部からの侵入を防ぐため、裾部の先端を土に埋める。
  3. トンネル被覆した時に内部が高温にならないよう、ハウス内の換気に努める。
  4. ミブナ栽培において、近紫外線カットフィルムと0.6o又は0.8o目合いの防虫ネットによるトンネル被覆を併用しても、商品性への影響は認められない。

[その他]
研究課題名 : 中山間地域の特性を生かした基幹野菜の高品質、軽作業化生産技術
予算区分    : 地域基幹(国補)
研究期間    : 平成10年度(平成6〜10年)
研究担当者 : 福井正男、竹内敬一郎、赤堀 伸
発表論文等 : なし
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