イチジクのクワカミキリの加害様相とペルメトリン・エアゾール剤による防除


[要約]
イチジクのクワカミキリは結果枝に産卵し、結果枝から主枝部へ食入孔を造りながら移動する。9月下旬に、ペルメトリン・エアゾール剤を幼虫生息部の食入孔へ噴射注入は、高い防除効果が得られ、処理時間も短く実用的である。
兵庫県病害虫防除所・中央農業技術センター 農試 環境部
大阪府立農林技術センター  環境部 病虫室
[連絡先] 0790-47-1222
            0792-58-6551
[部会名] 生産環境(病害虫)
[専門]    作物虫害
[対象]    果樹類
[分類]    普及

[背景・ねらい]
 イチジクを加害するクワカミキリは、ふ化後直ちに木質部に入り込むため、既存の薬剤の塗布や散布では防除が困難である。被害形態を明らかにして、かんきつのゴマダラカミキリに有効なペルメトリン・エアゾール剤の適用性と防除効果を検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. クワカミキリの産卵部位は直径2センチ程度の結果枝がほとんどで、ふ化後早い時期から木質部中央に食入し、空洞の孔道を造りながら主枝部へ移動する。孔道の長さはイチジクの生育期の9月下旬は約10cmで、生息する幼虫はすべて若齢である。休眠期の12月下旬での孔道の長さは約50cmで、生息する幼虫は中・老齢である(表1)。
  2. 7月下旬処理では処理36日後の死虫率は82.4%であり、9月下旬処理では処理7日後の死虫率は100%と、生育期処理により高い防除効果が得られる(表2)。12月下旬の処理では防除効果は劣る(表3)。
  3. クワカミキリ幼虫の防除適期は幼虫の齢期と防除効果から9月下旬と判断される。
  4. ペルメトリン・エアゾール剤処理の所要時間は10a当たり約40分であり、薬剤の樹幹散布より短い(表4)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 長細管ノズルでペルメトリン・エアゾール剤を食入孔に約3秒間噴射注入することによりクワカミキリ幼虫に対し防除効果が得られる。
  2. ペルメトリン・エアゾール剤を上方あるいはななめ上方に向けて噴射すると薬液が手元に逆流するため、作業の際にはゴム製またはビニル製の長手袋および保護用眼鏡を着用する。
  3. 家庭園芸用のペルメトリン・エアゾール剤はイチジクのクワカミキリ対象に、平成10年4月21日に適用拡大された。

[その他]
研究課題名 : イチジクのカミキリムシ類の防除対策(兵庫)、特産果樹の害虫に関する研究(大阪)
予算区分    : 県単、府単
研究期間    : 平成10年度(平成7、8年)
研究担当者 : 山下賢一、二井清友、廣瀬敏晴、田中尚智、清水克彦(兵庫県)、田中 寛、柴尾 学、草刈眞一(大阪府)
発表論文等 : イチジクを加害するクワカミキリの被害解析並びにペルメトリン・エアゾール剤の防除効果と作物残留、兵庫県立中央農業技術センター研究報告、第47号、63-67、1999.
                   イチジクにおけるクワカミキリの防除、大阪府立農林技術センター研究報告、第31号、23-25、1995.
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