- [要約]
- 雨よけ栽培の秋ギクにおけるミカンキイロアザミウマの発生は、膜割れ前のキク上ではわずかであるが、膜割れ後の花の中で急増する。したがって、薬剤防除は膜割れ前から7日以内の短い間隔で計画的に実施する。
広島県立農業技術センター・環境研究部
[連絡先] 0824-29-0521
[部会名] 生産環境(病害虫)
[専門] 作物虫害
[対象] 花き類
[分類] 普及
-
[背景・ねらい]
- 広島県では1993年6月に、侵入害虫ミカンキイロアザミウマの発生が確認され、1998年12月末で38市町村に分布を拡大し、キク、バラ、トマト、ピーマン等の花弁や果実に食害傷による被害を出している。そこで、雨よけハウス栽培の秋ギクにおける本種の発生消長と防除時期を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
- 雨よけ栽培の秋ギク(秀芳の力)における本種の成虫と幼虫の発生は、膜割れ前のキク上ではわずかであるが、膜割れ後の花の中で急増する(図1)。
- 夏秋ギク(精雲)と秋ギクの放飼試験においても、膜割れ後の放飼では、膜割れ前に比べ150倍以上に増殖する(表1)。
- 花の中で増殖した幼虫は開花最盛期が過ぎ、小花が枯れ始めてくる頃から減少し、替わって成虫が増加してくる。12月になるとキク株元から生えてくる冬至芽に成虫と幼虫が寄生し、巧みに生活環が維持されている(図1)。
- 夏秋ギクの2番花に成熟卵を持った多数の雌成虫と産卵数が認められる時期でも、同一のハウス内に栽培された膜割れ前の秋ギク上には成虫の寄生はみられるが、産卵数はわずかである。しかし、膜割れ始めから7日以降の1分〜2分咲きと開花が進む程、成熟卵を持った雌成虫と小花中の産卵数が増加する(表2)。
- したがって、ミカンキイロアザミウマの雌成虫が未成熟で、産卵数が少ないキクの膜割れ前から7日以内の間隔で、薬剤防除を計画的に行なうことが必要である。
[成果の活用面・留意点]
- 本種の発生源、飛来源となる未収穫花や2番花などは早めに処分する。
- 防除が開花時期と重なり薬害が生じやすいので、品種によって薬剤選択に注意する。
[その他]
研究課題名 : 花き・果菜類の新発生害虫ミカンキイロアザミウマの緊急防除対策
予算区分 : 地域重要新技術
研究期間 : 平成10年度(平成8〜10年)
研究担当者 : 細田昭男、林 英明、星野 滋
発表論文等 : なし
目次へ戻る