- [要約]
- 市販の培地成分3種に抗菌剤4種を加えたもみ枯細菌病菌 Burkholderia glumae 検出用の新しい固形培地を考案した。この培地は、もみの保菌率の簡易検定に有効である。
大阪府立農林技術センター・環境部・病虫室
[連絡先] 0729-58-6551
[部会名] 生産環境(病害虫)
[専門] 作物病害
[対象] 稲類
[分類] 指導
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[背景・ねらい]
- イネもみ枯細菌病は、大阪府では箱育苗における苗腐敗症の主要な原因であるため、種もみの保菌率には高い関心が持たれている。検出には対馬らのS-PG培地が用いられるが、本培地は組成が複雑でコロニーの判別に経験を要するなど、現場での利用に適しているとはいえず、簡便な検出法が求められている。
[成果の内容・特徴]
- 今回考案した選択培地の組成は以下のとおりである。酵母エキス2g、ポリペプトン1g、イノシトール4gを1リットルの蒸留水に溶解し、pH4.8に調整後、寒天18gを加えて121℃15分加圧蒸気滅菌し、やや冷えてからセトリマイド10mg、クロラムフェニコール10mg、ノボビオシン1mg、TPN(ダコニール1000)100mgを加えてシャーレに分注し固形培地とする(以下CCNT培地と呼ぶ。図1)。本培地上では、B.glumae に近縁の B.gladiollii、B.plantarii、Pseudomonas fuscovaginae、P.syringae pv.oryzae等は生育できない。本培地の B.glumaeに対する平板効率は、S-PG培地の7割程度である。
- もみの保菌検定は図1に示した手順で行い、培養2日目に径1mm程度で乳白〜淡黄白色のコロニーを本菌と判定する。実験上は、もみ50粒中に本菌が25個付着したもみが1粒含まれていれば、図1の方法(200μl塗布の場合)でコロニーが検出できる。
- この方法により、府下50ほ場のもみの本菌汚染率を調べたところ、14ほ場(28%)のもみで汚染が確認された(表1)。このとき同時に8ほ場(16%)のもみから本菌以外の雑菌が検出されたが、本菌とは容易に区別された(抗血清で確認)。
[成果の活用面・留意点]
- オートクレーブと振とう装置と恒温器があれば、他は通常の器具を用い汚染を防ぐよう注意すれば検出操作は簡単であるので、普及センターや農協等の施設でも利用可能である。CCNT培地は、栄養成分を滅菌保存しておき必要なときに加熱融解して所定量の抗菌剤を添加してシャーレに流し込めば作製できるので、種もみ等の検査に迅速に対応できる。
- 培養温度は、空気漕式恒温器で40〜42℃の間であれば問題ない。シャーレに作製した培地は数日以内に使うことが望ましい。
- 写真1 [具体的データ]
[その他]
研究課題名 : 発生予察技術支援対策事業
予算区分 : 国補(植物防疫総合推進事業費)
研究期間 : 平成10年度(平成8〜10年)
研究担当者 : 瓦谷 光男、岡田 清嗣、草刈 眞一
発表論文等 : イネもみ枯細菌病菌の選択培地の検討(2)、日本植物病理学会報、64巻、6号、629、1998.
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