- [要約]
- 降雨に基づいてキク白さび病の感染時期を推定し、キクの中位葉以上の葉表に7日以上の間隔で病斑抑制効果の高いDMI剤を散布すれば、慣行散布と同等の防除効果が認められ、薬量が約70%削減できる。
奈良県農業試験場・環境保全担当・病害虫防除チーム
[連絡先] 0744-22-6201
[部会名] 生産環境(病害虫)
[専門] 作物病害
[対象] 花き類
[分類] 指導
-
[背景・ねらい]
- キク白さび病は20℃前後の気温と降雨により病勢が進展する。本病の防除は薬剤散布に依存しており、特にDMI剤が連用されている。薬剤防除はコストと労力を要し、薬剤の連用は耐性菌の発生を招く危険性がある。そこで、本圃において降雨後薬剤の葉表散布による減農薬防除を試みる。
[成果の内容・特徴]
- 無病徴感染した葉をDMI剤水溶液に浸漬すると、病斑形成が顕著に抑制できる(表1)。
- 本病に対して感受性の高い中位葉以上の葉にミクロブタニル剤3000倍希釈液を約10日間隔で散布すると,病勢の上位進展が抑制できる(図1)。
- 降雨により薬剤散布日を決定し、葉表のみに7日以上の間隔でDMI剤を散布する適期散布は、7日おきに葉の表裏にDMI剤を散布した慣行散布と比較してほぼ同等の防除効果が認められ、薬量は約70%削減できる(表2、図2)。なお,慣行散布の総使用薬量は7回で約3050リットル/10a,適期散布は5回で約900リットル/10aであった。
[成果の活用面・留意点]
- 初発生後は適温下では降雨日が感染日と推定でき、降雨日前後が防除適期となるので、秋キク以外の作型でも応用できる。
- 薬剤散布回数、薬量が軽減できるので、労力、コストともに負担の軽減となる。
- 降雨が連続する場合には適期散布でも7日間隔の散布が必要である。
- DMI剤の連用は耐性菌の発生を招くことがあるので、作用機作の異なる薬剤でローテーション散布を行う。
[その他]
研究課題名 : キク白さび病の発生生態の究明と防除技術の確立
予算区分 : 国補(花き類病害虫発生予察実験事業)
研究期間 : 平成10年度(平成7〜9年)
研究担当者 : 杉村輝彦、岡山健夫、西崎仁博
発表論文等 : キク白さび病の薬剤耐性菌発生の現状と対策、関西病虫害研報、第40号(講要)、158、1998.
目次へ戻る