- [要約]
- キヌヒカリなどいもち病罹病性品種栽培において、イミダロプリド・カルプロパミド箱粒剤の育苗箱施用とエトフェンプロックス・バリダマイシン・フェロムゾン・フサライド水和剤の穂ばらみ期散布で、主要病害虫が安定的に防除可能である。
和歌山県農林水産総合技術センター・農業試験場・病虫部
[連絡先] 0736−64−2300
[部会名] 生産環境(病害虫)
[専門] 作物病害・作物虫害
[対象] 稲類
[分類] 指導
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[背景・ねらい]
- 本県の水稲栽培は、品質重視の観点からキヌヒカリ等のいもち病罹病性品種の作付けが増加し、これまでに比べいもち病の発生が問題化している。一方、長期残効型の育苗箱施用剤の登場により防除体系の見直しが緊急課題となっている。
- そこで、紀南(いもち病、紋枯病、イネミズゾウムシ、ウンカ類などが防除対象)、紀中(いもち病、紋枯病、ウンカ類などが防除対象)、紀北(いもち病、紋枯病、ウンカ類、ニカメイガなどが防除対象)の3地域で、キヌヒカリまたはコシヒカリ栽培における省力防除体系として、育苗箱施用と本田期1回散布(穂ばらみ期にいもち剤+紋枯剤+ウンカ剤(鱗翅目及びカメムシ類にも有効な剤)を想定し、その実用性を検討する。
[成果の内容・特徴]
- いもち病は罹病性品種の栽培増に伴い多発傾向で、近年は降雨量が少なくても発生が多い(図1,2)。
- 平成8年はいもち病がやや多発し、平成9年はいもち病、紋枯病が多発、イネミズゾウムシがやや多発した。平成10年はコブノメイガが多発、葉いもちとトビイロウンカがやや多発した。他の病害虫は平成8〜10年にかけてほぼ平年並の発生である。
- 育苗箱施用と穂ばらみ期散布の体系防除では、病害虫の発生程度、収量は農家慣行防除と比較し、3地域、3カ年ともほぼ同等である(表1)。
- キヌヒカリなどいもち病罹病性品種栽培において、イミダロプリド・カルプロパミド箱粒剤の育苗箱施用とエトフェンプロックス・バリダマイシン・フェロムゾン・フサライド水和剤の穂ばらみ期散布の2回で、主要病害虫がほぼ安定的に防除可能である。ニカメイガやコバネイナゴ等に対しては、イミダクロプリド粒剤に代えてフィルロニル粒剤を用いる。
[成果の活用面・留意点]
- 種子消毒、雑草防除は別途行う必要がある。
- 穂ばらみ期散布は、穂いもちを重点防除とする場合、走り穂が認められたら時期を逸しないよう行う。
- 出穂期以降に突発的に発生する斑点米カメムシ類などに注意し、多発圃場では追加防除が必要と思われる。
[その他]
研究課題名 : 効率的防除技術開発による農作物の安定生産
予算区分 : 県単
研究期間 : 平成10年度(平成8〜10年)
研究担当者 : 大賀ゆかり、井口雅裕、吉本均、田村誠、森下正彦、大橋弘和、矢野貞彦
発表論文等 : なし
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