ミカンキイロアザミウマによるトルコギキョウ茎葉被害の品種間差異


[要約]
ミカンキイロアザミウマのトルコギキョウ茎葉被害は品種間差異がある。葉での幼虫飼育では、被害のない品種では生育できないが、被害の多い品種では生育が良好である。後者では2番花の茎葉伸長期に発生が増加し、花弁被害が助長される。
和歌山県農林水産総合技術センター・農業試験場・病虫部
[連絡先] 0736−64−2300 
[部会名] 生産環境(病害虫)
[専門]    作物虫害
[対象]    花き類
[分類]    指導

[背景・ねらい]
 ミカンキイロアザミウマはトルコギキョウの花弁と茎葉に被害を与え、その被害程度は品種間で異なる。茎葉被害における品種間差異を明らかにし、茎葉での本種の増殖による花弁被害への関与を検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. ミカンキイロアザミウマがトルコギキョウの展開葉を加害すると、葉表に白い連続した斑点及び引っかき傷が発生する。
  2. 現地の同一圃場で栽培された品種間で、茎葉被害に明らかな差異が見られる(図1)。「ミッキーバイカラーローズ」、「ネイルピーチネオ」、「ネイルマリンネオ」の3品種は被害株率が高く、「あずまの紫」、「あずまの波」、「あずまの調」、「あずまの薫」、「エクローサピンク」、「ネイルピンク」、「ホワイトパレス」等の品種では、被害がほとんどない。また、これらの中間の被害を示す品種もみられる。
  3. 「ミッキーバイカラーローズ」と「あずまの紫」の葉及び花弁の切片(寒天培地上)で幼虫を室内(25℃)飼育すると、「あずまの紫」では生存率は低く、生育に不適と考えられる。「ミッキーバイカラーローズ」では生存率は比較的高く、葉での増殖が可能である(図2)。一方、花弁では両品種とも良好な生育を示す。
  4. 2番花の茎葉伸長期(2〜4月)において、茎葉被害のない「エクローサピンク」では青色粘着トラップの捕獲虫数は少なく、茎葉被害の多い「ネイルマリンネオ」では捕獲虫数は多く推移し、開花盛期の6月には両品種の捕獲虫数はほぼ同等となる(図3)。
  5. したがって、茎葉で増殖が良好な品種を導入した施設では、開花前に密度が高まり、花弁被害を助長することが考えられる。

[成果の活用面・留意点]

 トルコギキョウの茎葉伸長期において、本種の増殖が好適な品種では発生に注意し、発生が多い場合には開花前に防除する。

[その他]
研究課題名 : 花き・果菜類の新発生害虫ミカンキイロアザミウマの緊急防除対策
予算区分   : 地域重要新技術(国補)
研究期間   : 平成10年度(平成8〜10年)
研究担当者 : 大橋弘和、森下正彦、井口雅裕、矢野貞彦
研究論文等 : ミカンキイロアザミウマによるトルコギキョウ茎葉被害の品種間差異
         関西病虫害研究会報第40号、160、1998.
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