- [要約]
- モモサビダニに対して防除効果がなく、有力天敵であるニセラーゴカブリダニに対して悪影響の大きい合成ピレスロイド剤(例えばフルバリネート)をアブラムシ類やシンクイムシ類対象に散布すると、天敵の死亡によってサビダニが多発する。
岡山県立農業試験場病虫部
[連絡先] 08695-5-0271
[部会名] 生産環境(病害虫)
[専門] 作物虫害
[対象] 果樹類
[分類] 指導
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[背景・ねらい]
- 最近モモサビダニによるモモの葉の被害が全国的に多発して問題となっているが、その原因については不明である。合成ピレスロイド剤散布による天敵の死亡がサビダニ多発の原因と思われるので、そのことを室内及び圃場試験で実証する。
[成果の内容・特徴]
- 合成ピレスロイド剤であるフルバリネート水和剤はサビダニに対してほとんど防除効果がない上に、カブリダニに対して著しい悪影響を及ぼす。一方、同じ合成ピレスロイド剤でもフェンプロパトリン乳剤はカブリダニに対する悪影響は大きいが、サビダニに対する防除効果は高い(表1)。
- 殺ダニ剤であるピリダベン水和剤はサビダニに対して防除効果が高く、カブリダニに対する悪影響も比較的小さい(表1)。
- 昆虫成長制御剤であるフルフェノクスロン乳剤及びテフルベンズロン乳剤はサビダニに対してある程度の防除効果があり、カブリダニに対する悪影響は小さい(表1)。
- 収穫期の葉の被害程度は、フルバリネート水和剤を散布した区できわだって大きく、テフルベンズロン乳剤とフルフェノクスロン乳剤を散布した区、フェンプロパトリン水和剤やピリダベン水和剤などを散布した区、無散布区では低い(図1)。なお,テフルベンズロン乳剤とフルフェノクスロン乳剤を散布した区及び無処理区ではカブリダニが多く観察された。
- このように、サビダニに対して防除効果がなく、天敵であるカブリダニに対して悪影響の大きい合成ピレスロイド剤を散布すると、天敵の死亡によってサビダニが多発する。
[成果の活用面・留意点]
- 合成ピレスロイド剤(フルバリネート)のカブリダニに対する悪影響は約1か月に及ぶので、アブラムシ類やシンクイムシ類を対象に使用する場合は5月末までにとどめ、それ以降はカブリダニに悪影響の小さい殺虫剤を使用する。
[その他]
研究課題名 : 果樹サビダニ類の発生生態に基づく総合的防除技術の確立
予算区分 : 地域重要新技術
研究期間 : 平成8年度(平成7〜11年)
研究担当者 : 近藤 章、平松高明
論文発表等 : なし
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