モモサビダニの被害解析


[要約]
モモサビダニによってモモの葉を強く加害されると、当年の果実の糖度が低下するだけでなく、早期落葉が起こることによって樹勢が低下し、翌年の果実品質にも悪影響が及ぶ。
岡山県立農業試験場病虫部
[連絡先] 08695-5-0271
[部会名] 生産環境(病害虫)
[専門]    作物虫害
[対象]    果樹類
[分類]    指導

[背景・ねらい]
  モモサビダニの加害によって、モモの葉の表面が銀白色に輝く被害が全国的に多発しているが、この被害が果実品質や樹勢などに及ぼす影響については不明な点が多い。そこで、被害が問題となりやすい晩生品種‘白桃’を用いて被害解析を行う。

[成果の内容・特徴]

  1. 収穫期の葉の被害度と果実の重量、酸度との間には一定の関係がみられない。しかし、糖度は被害度が増加するにつれて有意に減少する(図1)。
  2. 収穫期の葉の被害度が増加するにつれて9月下旬の落葉率も有意に増加する(図2)。通常の落葉期は10月下旬であることから、サビダニに強く加害された樹では早期落葉が起こりやすいと考えられる。
  3. サビダニの加害によって早期落葉した被害多発樹(9月下旬の落葉率:70〜80%)では、健全樹(同5〜10%)に比べ、翌年の果実の糖度、重量、酸度がいずれも有意に減少する(表1)。これは被害多発樹で樹勢が低下していることを示唆している。
  4. 以上の結果から、モモサビダニによる葉の激しい被害は、当年の果実糖度の低下、早期落葉を招き、ひいては翌年の果実品質の低下をもたらす可能性が高い。

[成果の活用面・留意点]

 ‘白桃’などの晩生品種はもちろんのこと、早生・中生品種でもサビダニに強く加害されると早期落葉によって樹勢が低下し、翌年の果実品質にも影響するので、収穫後(7月下旬〜8月上旬)の防除も重要である。

[その他]
研究課題名 : 果樹サビダニ類の発生生態に基づく総合的防除技術の確立
予算区分    : 地域重要新技術
研究期間    : 平成9年度(平成7〜11年)
研究担当者 : 近藤 章、平松高明
論文発表等 : なし
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