イチゴ水耕栽培でのケイ酸カリ施用によるうどんこ病発生抑制


[要約]
イチゴの水耕栽培で、養液にケイ酸カリを添加するとイチゴ葉中のケイ酸含量が高まり、うどんこ病の発病を抑制する。うどんこ病罹病性品種「とよのか」では、ケイ酸の養液中濃度25ppm以上、葉中含量1.5%以上で発病抑制作用が顕著である。
兵庫県病害虫防除所・中央農業技術センター 農試 環境部
[連絡先] 0790-47-1222
[部会名] 生産環境(病害虫)
[専門]    作物病害
[対象]    果菜類
[分類]    研究

[背景・ねらい]
  イチゴうどんこ病は、西日本において罹病性品種・「とよのか」の普及にともない大発生するようになった。さらに、イチゴでは葉裏などに薬液が付着しにくいこと、EBI剤に対するうどんこ病菌の感受性が低下していることにより、薬剤だけでは防除が困難な状況にある。そこで、病害抵抗性の付与効果のあるケイ酸を水耕栽培の養液に添加し、うどんこ病の発生抑制効果を検討した。

[成果の内容・特徴]

  1. イチゴの水耕栽培ではケイ酸を効率的に吸収して、養液の添加濃度が高いほど葉中のケイ酸含量は高くなる(図1)。
  2. ケイ酸を添加した養液でイチゴを水耕栽培すると、葉のうどんこ病の発生を約3か月間にわたり抑制し、果実の発病も少ない(図2)。
  3. 葉の発病に対しては養液中のケイ酸濃度が25ppm以上で、果実の発病に対しては50ppm以上で高い抑制効果が発現する(図2)。
  4. 葉中のケイ酸含量と葉の発病の関係については、「とよのか」ではケイ酸が1.5%以上で発病を抑制するのに対し、「女峰」や「宝交早生」では0.5%でも極めて発病は少ない(図4)。

[成果の活用面・留意点]

  1. ケイ酸の添加濃度が100ppmの範囲内では、ケイ酸によるイチゴ果実の食味への影響はない。
  2. ケイ酸カリを施用するとpHが高くなりやすく、pH8以上になると「鉄欠乏」を起こす恐れがあるため、鉄を添加する必要がある。

[その他]
研究課題名 : イチゴうどんこ病の総合防除
予算区分    : 県単
研究期間    : 平成10年度(平成8〜10年)
研究担当者 : 神頭武嗣、三好昭宏
発表論文等 : 水耕栽培におけるイチゴうどんこ病に対するケイ酸カリ施用効果、日本植物病理学会誌、63巻6号、521、1997.
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