イチョウイモの芋内におけるヤマノイモモザイクウイルスの濃度分布


[要約]
イチョウイモのヤマノイモモザイクウイルス(JYMV)罹病芋の芋内でのウイルスの濃度は、上部の蔓発生部位で低く、中位部以下で高い。
山口県農業試験場・環境部・病害虫研究室
[連絡先] 0839-27-0211
[部会名] 生産環境(病害虫)
[専門]    作物病害
[対象]    いも類
[分類]    研究

[背景・ねらい]
  イチョウイモは、山口県における中山間地の高収益な特産作物として重要な位置を占めており、今後栽培面積の拡大が予想される。しかしながら、現地で栽培されているものはほとんどがヤマノイモモザイクウイルス(JYMV)に汚染されており、収量性の向上を妨げる要因となっている。通常イチョウイモは、種芋を分割して定植することで増殖を行っているため、芋内でのウイルスの分布が定植後の発病に直接影響すると考えられる。そこで、抗血清反応によって芋内のウイルスの分布を解明し、健全芋育成及び弱毒ウイルスの選抜のための資料を得る。

[成果の内容・特徴]

  1. 罹病芋を横方向に4分割し、それぞれの中心部の組織を磨砕後、間接ELISAによりJYMVの検出を行うと、蔓発生部位(上位部)の吸光度のみが、他の部位と比較して明らかに低い(表1)。
  2. 罹病芋を中部縦横方向に切断し、Direct tissue blot immunoassay(DIBA)を行った場合、縦断面では蔓発生部位(上位部)の発色が弱く、中位部での発色が強い。また、横断面では縦断面に見られるような発色の差は認められない(図1)。
  3. JYMVの罹病芋を上部と下部に切り分け、それぞれを定植し、葉のモザイクの程度を栽培期間を通じて比較すると、芋の上部由来の植物の方が下部由来のものよりも病徴が軽くなる傾向がある(図3)。
  4. 以上のことから、芋内におけるJYMVは、上位部の蔓発生部位で少なく、中位部以下に多く分布する。

[成果の活用面・留意点]

  1. JYMVに罹病した種芋を定植する場合には、ウイルス濃度の低い中位部以上を使用することが望ましい。
  2. 弱毒ウイルス株を選抜するに当たっては、ウイルス濃度の高い下位部を種芋として栽培した上で、病徴がなく、優良な形質を有することを確認する必要がある。

[その他]
研究課題名 : ヤマノイモモザイク病(ヤマノイモモザイクウイルス)の弱毒ウイルスによる防除実用化技術の開発 
予算区分    : 地域先端
研究期間    : 平成10年度(平成7〜9年)
研究担当者 : 鍛治原寛、井上興、角田佳則
発表論文等 : イチョウイモにおけるヤマノイモモザイクウイルスの局在性、日本植物病理学会会報(講演要旨)、64巻4号、400、1998.
目次へ戻る