- [要約]
- 輪換畑のキャベツ栽培において、畝立て作業時に施肥機を装着し、緩効性肥料を作条施肥すると、施肥効率が向上し、施肥節減と窒素流出負荷軽減が図れる。また、残さ鋤込み後、暗渠の排水水位を高くすると、硝酸態窒素の流出を低減できる。
滋賀県農業試験場・環境部・土壌肥料係、環境保全係
[連絡先] 0748-46-3081
[部会名] 生産環境(土壌・気象)、野菜花き(野菜)
[専門] 肥料
[対象] 葉茎菜類
[分類] 普及
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[背景・ねらい]
- 近年、米の需給調整政策により、野菜などの高収益作物を組み合わせた田畑輪換栽培が増加しているが、水稲に比べて施肥量も多く、硝酸態窒素の流出負荷増大が懸念される。
- そこで、閉鎖性水域である琵琶湖に接する田畑輪換水田において、秋冬キャベツの効率的な施肥技術を確立するとともに、水田の還元層を利用した排水浄化技術を開発する。
[成果の内容・特徴]
- 秋冬キャベツは基肥施用量の割合が高く、半湿田の田畑輪換ほ場で栽培すると、リンの流出量は少ないものの、降水量の多い年に硝酸態窒素の流出量が増加し、その大部分が暗渠から排出される(表1)。
- 畝立て作業時に、ブロワ付き施肥機(容量120L)をロータリに装着し、ロータリの前にすじ状に施肥すると、基肥の作条施用が能率的に精度良くできる(図1)。また、トラクタ前部に粉剤施用機を装着すると、根こぶ病防除粉剤の作条施薬も同時にできる。
- 緩効性肥料(CDU化成)を利用する場合、畝立て作条施肥によって施肥効率が向上し、追肥(約5kgN/10a)を省略でき、窒素流出負荷も僅かながら軽減できる(表2)。
- キャベツの収穫残さを鋤込むと、分解されやすく、後作水稲までの間に窒素の流出量が増加する。しかし、暗渠排水口にエルボーを取り付け、排水水位を高くすると、排水中の硝酸態窒素濃度が明らかに低下し、リンおよび CODの流出量もほとんど増加せず、水田下層土の還元層を利用した水質浄化が可能である(図2、表3)。
[成果の活用面・留意点]
- 緩効性肥料を利用した作条施肥技術は、窒素の土壌溶液濃度を高めることが必要な作物に対して効果が高い。また、キャベツ結球始期に栄養診断(葉柄基部の硝酸態窒素濃度)によって追肥の要否を判定すると、変動の多い降雨条件下でも生育が安定する。
- 暗渠排水の水位制御による脱窒促進効果は、グライ層のある田畑輪換水田で効果が期待できるが、今後、好適な排水水位の設定等を含めてさらに検討する必要がある。
[その他]
研究課題名 : 琵琶湖集水域の田畑輪換水田および茶園における省肥料環境保全技術の確立
予算区分 : 地域基幹
研究期間 : 平成10年度(平成6〜10年)
研究担当者 : 柴原藤善、忠谷浩司、大橋恭一、小森信明
発表論文等 : なし
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