- [要約]
- 市販VA菌根菌資材を混和した培土で育苗した黒大豆をほ場で栽培すると、根粒着生量、根重及び着莢数が増加して増収効果が得られる。
京都府農業総合研究所・環境部
[連絡先] 0771-22-6494
[部会名] 生産環境(土壌肥料)
[専門] 土壌
[対象] 豆類
[分類] 普及
-
[背景・ねらい]
- 黒大豆は京都府特産作物の一つであり、有利な転作作物として栽培面積は増加しているが、近年子実収量が100kg/10aを下回る年が続いている。また、枝豆用品種「紫ずきん」の栽培が本格的に始まり、これら低生産性ほ場での増収のための技術開発が求められている。一方、京都府では各種野菜へのVA菌根菌資材の利用技術の開発を進めており、その効果を確認している。そこで、この資材を黒大豆に適用することにより生産の安定化を図り、収量性を向上させるための効率的な利用技術を開発する。
[成果の内容・特徴]
- 市販VA菌根菌資材(セラキンコン、菌種はGigaspora margarita)を培土(ナプラ培土)に30g/L混和して72穴のセル成型苗用トレイに充填し、黒大豆種子(品種は「新丹波黒」、「紫ずきん」)を播種する。育苗床内の最低温度を15℃以上に保ちながら12日間育苗することによって、黒大豆苗に感染、定着させることができる。
- VA菌根菌接種苗はほ場に定植後、無接種苗と比較して細根が多く形成されて根重が増加するが、茎葉重に差は見られない(図1)。
- VA菌根菌接種区(以下、接種区)では黒大豆1個体に着生する根粒数、根粒重が無接種区に比べて増加する(図2)。
- 接種区では着莢数が増加し、枝豆用品種の「紫ずきん」、子実用品種の「新丹波黒」ともに収量が約10%増加する(表1)。
[成果の活用面・留意点]
- セル成型苗用トレイを用いて育苗するため、機械移植に適用できる。
- 育苗にあたっては種子伝染性病原菌に汚染されていない健全種子を使用し、殺菌剤による種子消毒は行わない。
[その他]
研究課題名 : VA菌根菌の京都府特産作物栽培への利用
予算区分 : 府単、受託(財団法人肥料経済研究所)
研究期間 : 平成10年度(平成9〜11年)
研究担当者 : 松本静治、吉川正巳
発表論文等 : 黒大豆に対するArbuscular菌根菌の接種効果、 日本土壌肥料学会講演要旨集、第44集、56、1998.
根粒菌とArbuscular菌根菌の混合接種が黒大豆の生育に及ぼす影響、日本土壌肥料学会関西支部講演会要旨集、第94回、20、1998.
目次へ戻る