バラのロックウール栽培排液のキュウリ、レタス栽培への再利用


[要約]
バラのロックウール栽培の排液を液肥として再利用する栽培は、キュウリとレタス栽培において、慣行栽培と同等以上の収量を得ることができる。しかも、この栽培は少量多回数施肥のために窒素の利用率が高く、慣行栽培と比べて減肥できる。
広島県立農業技術センター・環境研究部
[連絡先] 0824-29-0521
[部会名] 生産環境(土壌・気象)
[専門]    資源利用
[対象]    果菜類
[分類]    普及

[背景・ねらい]
  バラのロックウール栽培では、排液のほとんどが施設外へ排出されているため、養液の無駄にとどまらず、河川や地下水汚染の一因となることが懸念される。そこで、バラのロックウール栽培の排液を野菜(夏どりキュウリ、秋どりレタス)のハウスでの土耕栽培へ施用する技術を検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. バラのロックウール栽培の排液は、1L当たり、窒素で150〜250mg、リンで30〜60mg、カリウムで300〜700mgの肥料成分を含んでいる。
  2. 慣行栽培は、普通化成肥料を利用した基肥と追肥の施肥体系である。排液利用栽培は、排液の貯蔵タンクと灌水チューブを用いて、基肥無しで排液を7日ごとに(キュウリの7〜8月は3日ごと)10mm灌液する。灌液回数はキュウリが17回、レタスが6回となり、1回当たりの窒素の平均施用量は、1a当たり約0.2sである。
  3. 排液利用栽培による収量は、慣行栽培と比べてキュウリで25%多く、レタスで同等である(図1)。
  4. 排液利用栽培では、窒素施用量は慣行栽培と比べてキュウリで9%減、レタスで42%減となるが、窒素吸収量は同等以上である。また、みかけの窒素利用率(窒素の施用量に対する吸収割合)は100〜104%となり、慣行栽培と比べて高い(表1)。
  5. 栽培期間中の作土における乾土100g当たりの硝酸態窒素量は、慣行栽培で最高値が26mgにまで達し、変動が大きい。一方、排液利用栽培では3mg以下の低水準で推移する(図2)。

[成果の活用面・留意点]

  1. バラのロックウール栽培の排液量は、年間10a当たり約220m3で、窒素量として約48kgである。この窒素量は、10a当たりのキュウリとレタスの1作必要量にほぼ相当する。
  2. 排液の貯蔵は、貯蔵タンク内における藻の発生を防ぐために暗所で行う。
  3. 再利用する排液は、50℃以上の加熱殺菌処理することが望ましい。

[その他]
研究課題名 : 環境保全型栽培基準設定調査
                   バラのロックウール栽培における排液処理法改善試験
予算区分    : 土壌保全
研究期間    : 平成9年度(平成6〜9年)
研究担当者 : 國田丙午、後 俊孝、松浦謙吉
発表論文等 : なし
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