栽培適地判定のための50mメッシュ気温分布図の作成


[要約]
局地気候が発達しやすい複雑地形下で、気温と作物生育の関係を調査して、市町村規模で適地判定を円滑に行うために、50mメッシュの気温分布図の作成法を開発した。
中国農業試験場・地域基盤研究部・気象資源研究室
中国農業試験場・総合研究部・総研第3チ−ム
[連絡先] 0849-23-4100
[部会名] 生産環境(土壌・気象)、野菜・花き(野菜)
[専門]    農業気象
[対象]    葉茎菜類
[分類]    指導

[背景・ねらい]
 局地的な気温分布の最近の観測から、複雑地形下では局地気候が発達して大きな気温差が生じやすく、従来の1kmメッシュの気温分布図では適作物や栽培適地の判定が困難であることが明らかになってきた。そこで、市町村規模の広さを対象として、気温を多点で測定して、詳細な気温分布図を作成すると同時に、気温と収量の関係を調査して、栽培適地判定を可能とする方法を開発する。

[成果の内容・特徴]

  1. 気温の測定は、簡易な日除けをつけたマイクロデ−タロガ−方式の温度計による(図1)。設置費は1地点当たり一万数千円である。デ−タ採取は数ヶ月間隔でもよいため、従来は極めて困難であった数十から数百地点の気温の測定が容易に行える。
  2. 気温観測地点の選定は、気温が高くなりやすい地点や低くなりやすい地点の数が十分な数になるように、移動気象観測の結果や地形を考慮して行う。位置の選定が適切でないと、局地気候の発達しやすい最低気温の分布図の作成精度が低下しやすい。霜道や冷気湖等は数十mの精度で位置決めが必要になる場合もある。
  3. 50mメッシュの気温分布図は、気温測定値に50mメッシュの標高値を用いる地形因子解析法を適用することで作成する(図2)。この際、説明変数の数を気温測定地点数の1割程度に抑えることで、重相関係数が高いだけでなく、推定誤差の小さい気温分布図が作成できる(表1)。作成した気温分布図は、従来の1kmメッシュに比べて分解能・精度とも高く、圃場毎の気温分布を推定することが可能である。
  4. 気温と収量の関係図は、作物の生育調査結果と気温分布図上の調査地点の気温とを対照することで作成する(図3)。生育調査は農家経営調査等で代替できる。これにより、従来困難であった調査対象地域の現在の栽培慣行のもとでの気温と収量の関係を容易に把握できる。
  5. 関係図(図3)の同一気温における収量の差は農家の栽培施設の設備や管理技術等の差による。収量の高いグル−プの気温に対する傾きから、気温が収量に及ぼす影響の強弱を判定する。図3の夜久野町の夏どりホウレンソウの場合、わずか1〜2℃気温が低下すると収量が大きく増加するので、栽培地を気温のより低い地区に移動する効果は極めて高いと判定できる。

[成果の活用面・留意点]

 高温による立枯れが問題になる夏どりホウレンソウや凍結による腐敗が問題となる冬春どりキャベツなど、気温が生育限界を決定する場合の適地判定に利用する。

[その他]
研究課題名 : 「複雑地形下の多様な気候資源の利用技術の開発」及び「栽培適地・適土壌の判定」
予算区分    : 連携研究(中山間)、地域総合(軟弱野菜)
研究期間    : 平成10年度(平成8〜10年)
研究担当者 : 大原源二、藤森英樹、植山秀紀
発表論文等 : 局地の50mメッシュ気温分布図の試作、農業気象学会講演要旨、104-105、1998.
                   局地の気温分布と野菜作付け適地の事例的検討、同上、142-143、1998.
                   太陽電池を利用した通風式温度計の試作、近畿中国農業研究、97、24-28、1999.
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