オリエンタル系ハイブリットユリの葉焼け症の原因究明とリン片除去による軽減法


[要約]
ユリの葉焼け症は初期生育の盛んな大球で発生しやすく、上位葉のP/Ca値(リン/カルシウム)が高いほど症状が重い。また、定植時に球根からリン片を2〜4枚剥離すると、上位葉のP/Ca値が低く、葉焼け症の発生を軽減できる。
兵庫県立中央農業技術センター・農業試験場・環境部
[連絡先] 0790-47-1117
[部会名] 生産環境(土壌・気象)
[専門]    肥料
[対象]    花き類
[分類]    研究

[背景・ねらい]
 オリエンタル系ハイブリットユリの輸入冷凍球を用いた年内出荷の作型において、葉焼け症の多発による商品性の低下が問題となっている。葉焼け症はユリの上位葉に白い斑点やかすり状に発生し、鑑賞価値を著しく低下させる。葉焼け症の原因の一つとしてカルシウム欠乏が指摘され、頻繁なカルシウム資材の葉面散布により、症状の軽減が可能であるが、効果は十分ではない。そこで、定植時の球根のリン片除去が上位葉のカルシウム含有率や葉焼け症の発生に及ぼす影響を検討し、対策確立のための資料とする。

[成果の内容・特徴]

  1. 葉焼け症の発生の激しい植物体では、発生していない植物体に比べて葉数が多く、その上位葉(5〜6葉)のカルシウム含有率が低く、リン含有率が高い(図1)。
  2. 葉焼け症の発生した植物体では、上位5葉中のP/Ca値が高いほど発生する葉数が多く、発生程度が大きい(図2)。
  3. 葉焼け症は植え付ける球根が重いほど、発生程度が大きい(図3)。またこの時、球根のカルシウム含有率は200〜500ppm程度と極めて低い水準にある。これらからユリ類の球根には元々カルシウムが少なく、葉焼け症は生育初期に根の未発達な状況で発生し、初期生育の盛んな大球でより発生しやすいと言える。
  4. ユリの初期生育を抑える目的で、球根のリン片を2〜4枚剥離すると、葉焼け症の発生は抑制され、葉中のP/Ca値も小さくなる(図4)。またこの時の花数は、リン片を除去しても減少しない(4.5花/株程度)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 日照や高温等他の要因の影響についても検討する必要がある。 
  2. リン片除去により初期生育がやや劣るので、それを回復する肥培管理法を開発する必要がある。

[その他]
研究課題名 : ユリ類の葉焼け症の発生原因の究明とその対策
予算区分    : 県単
研究期間    : 平成10年度(平成8〜10年)
研究担当者 : 牧浩之、岩井豊道、小山佳彦
発表論文等 :
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