- [要約]
- 中緯度地帯に属する我が国で予想される10%程度のオゾン層破壊に伴って生じる紫外線増加が、キャベツ、ハクサイ、ダイコン等アブラナ科露地野菜の生育・収量に及ぼす影響は極めて小さいと考えられる。
中国農業試験場・地域基盤研究部・気象資源研究室
[連絡先] 0849-23-4100
[部会名] 生産環境(土壌・気象)
[専門] 農業気象
[対象] 葉茎菜類
[分類] 研究
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[背景・ねらい]
- オゾン層の破壊に伴う紫外線増加が生態系に大きな影響を及ぼすことが懸念されている。しかし、屋外での紫外線の調光コストが極めて高いことなどから、野菜の生育に及ぼす紫外線の影響は、主として室内試験で調査され、可視光とともに紫外線の強さが変化する屋外での影響については不明の点が多い。そこで、オゾン層の破壊に伴う紫外線増加を露地圃場でシミュレートする実験系を用い、我が国の重要な露地野菜であるアブラナ科野菜の品種を多数供試して、紫外線の増加が生育・収量に及ぼす影響を定量的に調査する。
[成果の内容・特徴]
- 紫外線照射強度は、調光型UV-B照射装置を用い、UV-Bの生物学的影響量(UV-B BE)を自然光の2倍とし、UV-B以外のUV-A、可視光などの光環境がほとんで同じになるようにした(図1)。これはオゾン層が40%程度破壊された状況に相当する。WMO(世界気象機構)の予測では、中緯度地帯のオゾン層破壊は10%程度である。
- 紫外線増加(2〜4週間)が、葉の褐変や形態異常など苗の生長に及ぼす可視的な影響は、供試したキャベツ88品種、ハクサイ類73品種、ダイコン44品種、ハナヤサイ類20品種、メキャベツ3品種、ケール2品種、コールラビ4品種では認められなかった。これらのうち、生育に及ぼす影響は、ハナヤサイ類の1品種で認められただけで、ほとんどの品種で統計的に有意な影響は認められなかった(図2および図3)。
- 野菜の収量に紫外線増加(圃場での栽培全期間)が及ぼす影響は、キャベツ4品種およびダイコン4品種では、統計的に有意には認められなかった。しかしハナヤサイ類では、品種により収量に対する影響が認められた(表1)。
- 紫外線増加の影響は一部の品種では認められたが、すべての品種が一様に影響を受ける品目はなかった。したがって、中緯度地帯に属する我が国で予想されるオゾン層破壊に伴う紫外線増加が、アブラナ科露地野菜の収量に及ぼす影響は極めて小さいといえる。
[成果の活用面・留意点]
- 野菜の品質・成分等への影響については、今後検討する必要がある。
[その他]
研究課題名 : 紫外線増加が野菜・花卉に及ぼす影響の評価に関する研究
予算区分 : 環境庁「地球環境」
研究期間 : 平成10年度(平成8〜10年)
研究担当者 : 米村 健、大原源二、植山秀紀
発表論文等 : Effects of UV-B supplement on growth of Brassica、第25回国際園芸学会講演要旨、305、1998.他
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