- [要約]
- フキ在来系統の系統選抜と培養過程における試験管内選抜を行い、葉柄の緑色が鮮やかで、みずみずしく、歯切れが良く、秀品率向上と収量増加が認められる優良系統「のびすぎでんねん」を育成した。
大阪府立農林技術センター・栽培部・生物資源室
[連絡先] 0729-58-6551
[部会名] 生物工学、野菜・花き(野菜)
[専門] バイテク、育種
[対象] 葉茎菜類
[分類] 普及
-
[背景・ねらい]
- 大阪府下で栽培されている「愛知早生フキ」は、昭和初期に愛知県から導入され、70年以上栽培が続けられている。近年では株の老化や2〜3種類のウイルスの重複感染により、生産性や品質の低下が深刻な問題となっている。そこで現地から収集した在来系統の頭花を培養し、ウイルスフリー化の過程における試験管内選抜を行い、優良系統を育成する。
[成果の内容・特徴]
- 府内4市町のフキ生産出荷部会から推薦された在来系統を、平成7〜8年の2ヶ年、現地試験ほ場(泉南市)でハウス抑制栽培し、収量性に優れた系統1を選抜した(図1)。
- 平成8年、系統1の頭花を培養し、不定芽を形成した280系統の中から、不定芽形成が早く、葉柄の伸びが旺盛で、葉柄の緑色が鮮やかな5系統を試験管内で選抜した。
- 選抜した5系統と系統1を現地試験ほ場(泉南市)に定植し、平成9〜10年の2ヶ年、慣行のハウス抑制栽培を行った。年3回の収量調査を行い、収量性に優れた系統「のびすぎでんねん」を選抜した。本系統の収量特性は以下の通りである。
- 収量は10a当たり20.9tで、元株の系統1に対して29.8%増収する(図2)。また、選抜を行わなかった系統1のウイルスフリー株に対しても14.8%の増収となる。
- 葉柄の緑色が鮮やかで冴えがあり、赤色の着色は少なく(図3)、秀品率は5.8%向上し(図4)、秀品収量は38.6%増加する。
- 本系統は種苗登録を申請中である。
[成果の活用面・留意点]
- 平成10年度より大阪府園芸優良健全種苗供給事業を通じて、年600苗を供給し、平成13年産の出荷は全て「のびすぎでんねん」に更新する。
- ウイルスの再感染を防止するため、寒冷紗で全面被覆するか、在来系統から隔離した場所に種茎の増殖ほを設置する必要がある。
- 培養苗の利用は培養変異出現の危険性があるため、培養、育苗、種茎増殖の段階で、変異株のチェックを行い、優れた特性を維持する必要がある。
[その他]
研究課題名 : 有用遺伝資源の収集・保存とその利用技術の開発
予算区分 : 府単
研究期間 : 平成10年度(平成7〜9年)
研究担当者 : 岩本 嗣
発表論文等 : in vitro選抜を利用したフキ優良系統「のびすぎでんねん」の育成、近畿作物・育種研究、44号、1999.投稿中
目次へ戻る