尿素の葉面散布によるウンシュウミカンの省力的な夏肥施用
- [要約]
- ウンシュウミカンにおける5〜7月の尿素の葉面散布は吸収効率が高く、各器官への移行も速やかである。また、土壌からの吸収量も多いため、スプリンクラーを活用した省力的な夏肥施用が可能である。
和歌山県農林水産総合技術センター・果樹園芸試験場・品質環境部
[連絡先] 0737-52-4320
[部会名] 果樹
[専 門] 栽培
[対 象] 果樹類
[分 類] 普及
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[背景・ねらい]
- 極早生ウンシュウでは、春肥を無施用とし、樹勢にあわせた夏肥(満開期)と秋肥重点の施肥管理が望ましい。また、早生、普通ウンシュウの完熟およびマルチ栽培では、樹勢維持をはかるために年間窒素施用量の約20%を夏肥(満開期)とする施肥管理が適している。この夏肥をスプリンクラーを活用して省力的に施用(散布)すべく、尿素葉面散布の肥効および吸収後の各器官への移行を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
- 葉面散布に含まれる窒素の葉への吸収は、7月3回散布と5月2回散布ですぐれる。また、土壌からの吸収量も多く、地表面に落ちた散布液に含まれる窒素も速やかに樹体に取り込まれることから、スプリンクラーを活用した夏肥施用が可能である(図1)。
- 最終散布1週間後の葉面散布に由来する窒素含有量から吸収効率を算出すると、5月2回散布で29〜36%、7月3回散布で34〜42%である(図2)。
- 葉面散布に由来する窒素の器官毎の分布割合は、5、7月から10、11月の収穫期にかけて葉で減少し、反対に果実で増加する傾向である。また、7月散布で果実への分布割合が多い(図3)。
[成果の活用面・留意点]
- 7月散布では果実への移行量が多いため、樹体の窒素栄養を高めるという目的で葉面散布を施肥体系に組み入れる場合、5月に尿素500倍液を2回散布(1000リットル/10a/1回=窒素成分で1kg/10a/1回)するのが適当である。
- 表1 [具体的データ]
[その他]
研究課題名:みかんの均質安定生産システムの確立
予算区分 :県単
研究期間 :平成10年度(平成10〜14年)
研究担当者:鯨 幸和、田端洋一、菅井晴雄
発表論文等:ウンシュウミカンにおける葉面散布を活用した効率的な施肥法に関する研究 (第1報)夏期の尿素葉面散布の吸収と移行、園芸学会雑誌、68巻、別冊2、215、1999.
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