花弁培養により育成したスプレーギク新品種候補‘スイートビューティ(仮称)’


[要約]
‘桃松葉’の花弁培養により得られた再生植物の中から花色、花形の異なる変異個体を選抜し、電照栽培に適した新しいタイプの一重咲き中輪スプレーギク新品種‘スイートビューティ(仮称)’を育成した。
広島県立農業技術センタ−・生物工学研究所・育種研究室
[連絡先] 0824-29-0521
[部会名] 野菜・花き(花き)
[専 門] 育種、バイテク
[対 象] 花き類
[分 類] 普及

[背景・ねらい]
 スプレーギクは近年生産の伸びが著しく、品種は花色、花形ともに多様化の傾向にあり生産面では年間を通じた需要に応えるための開花調節が可能な品種が求められている。そこで、組織培養過程で発生する培養変異を利用した突然変異育種による新しいタイプのスプレーギクを育成する。

[成果の内容・特徴]

  1. 平成6年に、松葉咲菊品種‘桃松葉’の花弁培養を行い、再生植物の中から花形、花色の異なる数個体を選抜し、平成8〜9年に、各系統の変異形質の安定性及び生態的特性を調査し、優良な1系統‘スイートビューティ(仮称)’を選抜した。その特性は以下のとおりである。
  2. 花は中輪で、花弁の色はピンク白(JHS カラーチャート0101)、花盤は鮮明な緑色、舌状花弁数は30〜40枚、花弁の長さは4〜5cm、幅は2〜3mmである。
  3. ‘桃松葉’と比較して、開花期が少し早く、花弁の色が薄く、長さが少し短く、幅が細く、先端の形が尖ることで区別性が認められる(図1)。
  4. 電照による開花調節が可能であり、限界日長(13時間半)より短い日長条件下で開花させると花弁が放射状の立弁咲きとなり、花房の形(スプレーフォーメーション)が整い新しいタイプの切り花となる(図2)。
  5. 季咲き栽培では二次側蕾が多く付き花房の形が乱れるが、9月中旬まで電照すると花房の乱れが少なくなり切り花品質が向上する(表1)。
  6. 8月上旬定植、10月中旬電照打切りの作型では到花日数は‘桃松葉’より1週間短く12月中旬となり計画出荷が可能である(表2)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 普及地域は、県内の沿岸島しょ部の温暖地域を対象とする。
  2. 冬期電照栽培では、気温がマイナスになると花弁が傷みやすいので保温に努める。

[その他]
研究課題名:産地創出を目指す野菜・花き品種の育成
予算区分 :県単
研究期間 :平成11年度(平成6〜12年)
研究担当者:古谷博
発表論文等:なし

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