畜産堆肥等の生育阻害性の簡易判定


[要約]
畜産堆肥等の水浸出液の形態別窒素イオン濃度を簡易型反射式光度計で測定することにより花壇苗等に対する生育阻害性を簡易に判定することができる。また、浸出液中のコムギ種子根の伸長量を測定するバイオアッセイにより判定結果を補強できる。
奈良県農業試験場・栽培技術担当・花き栽培チーム
[連絡先] 0744-22-6201
[部会名] 野菜・花き(花き)
[専 門] 栽培
[対 象] 花き類
[分 類] 研究

[背景・ねらい]
 畜産堆肥等の有機質素材を花壇苗等の培地として利用する際、栽培時の生育阻害性の有無をあらかじめ確認しておく必要がある。そこで、簡易型反射式光度計により浸出液中の水溶性イオン濃度を測定するとともに、浸出液中でのコムギ種子根の伸長量を測定し、得られた結果をもとに生育阻害検定の可能性を検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. 堆肥浸出液の水溶性イオン濃度を簡易型反射式光度計を用いて測定した結果、堆積時間の経過とともに、アンモニウムイオン濃度が減少し、硝酸イオン濃度が上昇する。また、堆肥の浸出液に浸漬したコムギ根の伸長量を試験管内で測定した結果、堆積時間の経過にしたがって、根の伸長量が増加する傾向が見られる。(表1
  2. キンギョソウの栽培試験では、アンモニウムイオン/硝酸イオンの濃度比が2以下、あるいはコムギ根の伸長量をヒドロキシプロリン濃度で示した「阻害指数」が50以下の堆肥をもちいた場合に順調な生育を示す。(表1
  3. 処理法の異なる堆肥を培地に混入して、パンジーの栽培試験を行った結果、アンモニウムイオン/硝酸イオン濃度比が高く、浸出液の「阻害指数」の高い堆肥ほど、生育が阻害される傾向が見られる。(表2
  4. 本試験および予備試験(データ略)の結果から、pHおよびECの変化はコムギ根の伸長量に対し大きな影響を及ぼさないと思われる。
  5. 簡易判定法の操作手順は簡易型反射式光度計の使用方法に準ずる。

[成果の活用面・留意点]

  1. 堆肥中の生育阻害物質の特定は困難であるため、本試験ではコムギ根による阻害性の判定時に、生育阻害物質であるヒドロキシプロリンの濃度を指標とした。
  2. コムギ種子根のバイオアッセイは、簡易型反射式光度計による畜産堆肥等の熟度判定の結果を裏付けることができる。
  3. 堆肥以外の有機質素材を検定する場合にも、本法は有効であると考えられる。
  4. 対照作物およびバイオアッセイ用植物の拡大により、検定の精度を高める必要がある。

[その他]
研究課題名:堆きゅう肥の鉢花・花壇苗への利用
予算区分 :県単
研究期間 :平成10年度
研究担当者:前田茂一
発表論文等:なし

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