シバザクラ植栽による畦畔植生省力管理技術の経営評価と技術改善点


[要約]
シバザクラ植栽による畦畔植生管理技術は、慣行の草刈管理費用と累積費用が同等になるには10年を要する。さらに費用低減を図るためには、作業時間ではマルチ設置・挿し芽・植付けを、資材費ではマルチについて技術改善する必要がある。
広島県立農業技術センター・企画情報部・作物研究部・高冷地研究部
[連絡先]0824-29-0521
[部会名]営農、作物生産(育種・栽培)
[専  門]経営
[対  象]緑化植物
[分  類]研究

[背景・ねらい]
 地被植物植栽による畦畔管理技術は、急傾斜地における圃場整備水田の大型法面を対象に、従来の刈払いに代わる省力的な管理方法として普及しつつある。この技術の農業経営に及ぼす効果を、現在の技術条件で評価するとともに、今後の技術改善点を明らかにする。

[成果の内容・特徴]

  1. 定植後の初期段階に発生する雑草や土壌侵食を防止するため、マルチを張り付けた状態でシバザクラの苗を植え付ける方法を前提としている。
  2. 100m2 当たりのシバザクラ植栽に要する作業時間は、育苗11.9時間、定植18.9時間、合計30.8時間で、マルチ設置作業、挿し芽作業、植付け作業の比率が比較的高い(表1)。資材費は、育苗611円、定植14,467円、合計15,078円で、マルチ資材費の比率が特に高い(表2)。定植までに必要な初期費用の合計は、作業労賃を1,000円/時間(図1注3)とすると100m2 当り45,892円となる。
  3. シバザクラ植栽累積費用(初期費用45,892円+1年目1,800円+2年目以降500円×経過年数)と、慣行の草刈管理に要する累積費用(5,100円×経過年数)を比較すると、現在の技術条件では定植後10年経過時に両者の累積費用がほぼ等しくなる(図1)。
  4. 開発中の技術がより短期間で農家経営に対して効果を出すためは、今後、作業時間ではマルチ設置作業、挿し芽作業、植付け作業を、資材費ではマルチの低コスト化について検討する必要がある。

[成果の活用面・留意点]

  1. 植穴からの雑草の発生量によっては、定植後の維持管理に必要な労働負担が変動する可能性がある。

[その他]
研究課題名:中山間地域における畦畔・大型法面の維持、保全および景観形成技術の確立と多面的評価
予算区分  :新技術地域実用化研究
研究期間  :平成12年度(平成11〜13年度)
研究担当者:諫山俊之、保科 亨、下澤秀樹、前田光裕

目次へ戻る