中国地域の農林地がもつアメニティーの農業地域類型別にみた評価額


[要約]
農林地のアメニティー評価に用いられているヘドニック法に農業地域類型別の差違を明示的に取り込み、単位面積当たりの評価額を地目別に求めた。例えば水田の場合、中国地域の1世帯が評価する1ha当たりのアメニティー評価額は、山間、中間、都市、平地の順に低くなる。
中国農業試験場・総合研究部・動向解析研究室
[連絡先]0849-23-4100
[部会名]営農
[専  門]経済構造
[対  象]
[分  類]研究

[背景・ねらい]
 農林地がもつアメニティーの評価額は、面積と地目が同じであっても立地条件により異なると考えられるが、これまでの実証研究では立地条件による差違が必ずしも明示的に検証されているとはいえない。そこで、中国地域における農林地がもつアメニティーを農業地域類型別に1世帯1ha当たりで評価する(=1世帯が評価する農林地の1ha当たりの評価額を求める)。

[成果の内容・特徴]

  1. 用いた手法はヘドニック法である。農業地域類型別の差違を明示的に取り込むため、価格関数に類型ダミー変数(表1脚註参照)を付加した(関数型は両対数線型)。地代関数については、類型ダミー変数に対応する係数のほとんが有意であった。また、類型ダミー変数なしのモデルと比較すると対数尤度が改善(表1)されており、類型ダミー変数を付加する有効性が統計的に確認された。なお、評価年次は1995年である。
  2. 市町村別に推計した評価額(1世帯1ha当たり)の農業地域類型別の平均値(各地目面積をウェイトとする加重平均)を整理した(表2)。例えば水田の評価額は、山間(109円)、中間(72円)、都市(45円)、平地(14円)の順に低くなる。このことは、1世帯当たりでみると同じ1haの水田でも、山間、中間の方が都市、平地よりも良好なアメニティーをもたらしていることを示唆する。
  3. 類型ダミー変数なしのモデルで推定した水田の評価額は、都市(38円)で最も低く、中間(76円)よりも平地(83円)の方が高い(表2)。しかし、類型ダミー変数を付加したモデルの有効性が統計的に確認されたことを考慮すれば、後者のモデルから算出した評価額の方が、より現実を反映していると考えられる。

[成果の活用面・留意点]

  1. ヘドニック法の問題点のひとつとして関数型選択による計測誤差がある。そこでより一般的な関数型の適用を目指すとともに、他の代替的評価手法を用いることにより,ヘドニック法で得られた結果を補完的に検証していく作業が必要である。

[その他]
研究課題名:中国中山間地域における農林地の地目構成と外部経済効果の動向に関する研究
予算区分  :経常
研究期間  :平成12年度(平成11〜13年)
研究担当者:渡部博明
発表論文等:中国中山間地域における農林地の外部経済効果及び地目構成動向との関連に関する研究、2000年日本農業経営学会報告要旨、110、2000.

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