大阪府における農産物直売所の意義と運営上の課題


[要約]
大阪府内の農産物直売所は大半が小規模であるが、地域農業の活性化、生産者と消費者の交流等に果たす役割は大きい。品揃えや数量調整など運営上の課題は多岐にわたり、普及組織等には技術・運営の両面に対する支援が求められている。
大阪府立農林技術センター・企画部・企画経営室、技術普及課
[連絡先]0729-58-6551
[部会名]営農
[専  門]経営
[分  類]行政

[背景・ねらい]
 農産物流通の大型化・国際化や農業担い手の高齢者・女性への依存が進むなかで、農産物直売所が全国各地に設置されており、特に小規模産地を主体とする大都市では消費者との近接性を活かした多様な活動が展開されている。そこで、大阪府内において組織的に取り組まれているすべての直売所の代表者に対して1999年10月にアンケート調査を実施(調査票配布数92票、有効回収数90票)し、その実態や課題、要望等を明らかにした。

[成果の内容・特徴]

  1. 構成員、販売価格の決定者、販売作業や会計の担当者等を指標として、組織の運営形態を類型区分すると、「生産者中心型」(49%)、「生産者・農協協力型」(27%)、「農協主体型」(16%)、「自治体・消費者参加型」(8%)の4類型に大別できる。
  2. 参加農家は約1,500戸に達しているが、販売金額規模の小さい直売所が多い(表1)。1戸当たり年間販売額は38万円程度にとどまっており、直接的な経済効果が大きいとは言い難い。しかし、生産者の意欲向上や生産者同士あるいは生産者と消費者との交流の活発化、消費者の農業に対する理解の向上など、直売活動による効果を多くの代表者が指摘している(表2)。河内長野市内の直売所出荷者に対する調査でも同様の結果が得られており、都市農業地域の農業振興を図るうえで、直売所が果たす役割は大きい。
  3. 運営上の課題は多岐にわたるが、なかでも品揃えや数量調整がすべての類型の直売所に共通する課題となっている。また、高齢化に伴う参加農家の減少や役員のなり手不足が深刻な直売所も多く、これは「生産者中心型」において特に顕著である。これらのことから、今後、参加農家の増加や販売品目の増加、作付・出荷の計画化を図りたいとの指摘が多数みられる(表3)。また、普及センターや試験研究機関に対しては技術の開発・指導と併せて、直売所の運営やイベントの開催、ネットワーク化の推進に関する指導への要望が多く、それらに対する支援も必要とされている(表4)。

[成果の活用面・留意点]

     農産物直売所の開設や運営を支援する際の資料として活用できる。

[その他]
研究課題名:生鮮農産物流通の変化と多様化する流通チャネルに関する調査研究
予算区分  :府単
研究期間  :平成12年度(平成11〜13年)
研究担当者:内藤重之、舘太加志、原 忠彦、藤田武弘(大阪府立大学)
発表論文等:流通チャネルの多様化と都市近郊における農産物朝市・直売所の存立構造、農政経済研究、第22集、1-22、2000.

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