防風ネット、防風樹設置によるモモせん孔細菌病の発病抑制効果
- [要約]
- モモせん孔細菌病の発病は、強風雨(風速10m以上)で生じる傷によって助長される。防風ネット(網目4mm、高さ4m)または防風樹を設置することにより、園内の相対風速は防風ネット、防風樹からの距離とともに減少し、発病抑制効果も風当たりの強い園周辺部(1〜3列目)で高ことから、風当たりの強い園地では特に有効である。
和歌山県農林水産総合技術センター・果樹園芸試験場・紀北分場
[連絡先]0736−73−2274
[部会名]生産環境(病害虫)
[専 門]作物病害
[対 象]果樹
[分 類]普及
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[背景・ねらい]
- 和歌山県のモモ栽培は紀ノ川流域に集中しており、風当たりの強い園地が多い。モモせん孔細菌病は気象要因、特に生育期の強風雨により発病が助長されることから、発病に及ぼす風速の影響を検討するとともに、防除対策として防風ネットまたは防風樹による防風効果と発病抑制効果を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
- 送風機でモモ樹に風を当て、同時にせん孔細菌懸濁液を噴霧接種すると、発病葉率は風速が高まるとともに増加する。また、風による生傷発生葉率と発病葉率との間には有意な相関(r=0.9721, P<0.01)が認められる(表1)。
- 防風ネット(網目:4mm、高さ:4.0m)、防風樹(樹種:プリペット、高さ:3.8m)を設置した園内(高さ1.5m)の相対風速は、防風ネットまたは防風樹から遠ざかるとともに小さい(図1)。防風ネット、防風樹およびモモ樹の重なりによって風が減速すると考えられる。
- 防風ネットまたは防風樹設置園は、隣接する無設置園に比べ1列目、3列目とも発病果率、発病度が低い(表2)。このように、防風ネット、防風樹の設置はモモせん孔細菌病の発病を抑制する有効な防除手段となり、特に、風当たりの強い園周辺部でより効果が高い。
[成果の活用面・留意点]
- 設置費用は、防風ネット(高さ4m、網目4mm)が約70〜100万円/10a(四面を囲む場合)で、防風樹(シラカシ苗木を60cm間隔に定植)が約20万円/10a(四面を囲む場合)である。防風樹は防風ネットに比べ設置費用は少なくて済むが、成木になり効果を発揮するまで5〜7年を要する。
防風樹に適する樹種にはシラカシの他にプリペット、マキ、トウネズミ等がある。
[その他]
研究課題名:落葉果樹細菌病対策確立試験
予算区分 :県単
研究期間 :平成12年度(平成10年〜13年)
研究担当者:小山昌志、森下正彦、山内勧
発表論文等:モモせん孔細菌病に及ぼす気象要因と防風対策、関西病害虫研究会報、第42号(講演要旨)、99、2000.
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