近紫外線除去フィルムによる育苗期のユリ類葉枯病の防除
- [要約]
- ユリ類葉枯病菌の分生子形成は近紫外光に強く依存している。このため、近紫外線除去フィルムを用いて、育苗期の葉枯病が防除できる。
島根県農業試験場・環境部・病虫科
[連絡先] 0853-22-6650
[部会名] 生産環境(病害虫)
[専 門] 作物病害
[対 象] 花き類
[分 類] 普及
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[背景・ねらい]
- 葉枯病はユリ類の重要病害で、育苗期から発生する。本病の防除は薬剤散布に頼っているが、近年、複数の薬剤に対して薬剤耐性菌が確認されている。このような薬剤耐性菌は汚染種子により伝搬され、栽培初期から防除効果を不安定にしている。このため、薬剤に依存しない防除対策の確立が求められている。そこで、近紫外線除去フィルムを用いた防除方法について検討した。
[成果の内容・特徴]
- 一般農業用ビニルフィルムあるいは近紫外線除去フィルム(波長390nm以下吸収除去)で覆ったシャーレ内にシンテッポウユリの子葉切片を置床し、葉枯病菌を接種後光照射下に置くと、前者では多数の分生子が形成されるが、後者の紫外線除去下では分生子形成が抑制される。この傾向は分生子が形成される器官が異なった場合にも同様である(表1)。
- 自然光の下でも葉枯病菌接種苗における分生子形成数は、一般農業用ビニルフィルムで被覆した場合に比べて、近紫外線除去フィルム被覆下では著しく少ない(表2)。
- 近紫外線除去フィルムを展張したトンネル内で育苗すると、葉枯病の発生が顕著に抑えられる。(図1)。
- 近紫外線除去フィルム被覆下におけるシンテッポウユリの生育は、一般農業用ビニルフィルムの場合と比較して著しい差異はみられない(表3)。
[成果の活用面・留意点]
- 光質制御の観点から、換気や散水作業等、必要時以外の開放は避ける。
[その他]
研究課題名:花き類病害虫防除対策試験
予算区分 :県単
研究期間 :平成12年度(平成10〜14年)
研究担当者:塚本俊秀
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