温湯浸漬法によるイネ種子伝染性細菌病の発生抑制


[要約]
イネ種子伝染性細菌病である、もみ枯細菌病(苗腐敗症)、苗立枯細菌病、褐条病に対し、60〜62℃・10分間処理の温湯浸漬が有効である。
滋賀県農業総合センター農業試験場環境部病害虫管理担当
[連絡先]0748-46-3081
[部会名]生産環境(病害虫)
[専  門]作物病害
[対  象]稲類
[分  類]指導

[背景・ねらい]
 環境への負荷軽減と農産物の高付加価値化の視点から、化学合成農薬に依存しない防除法法への期待が高まっている。そこで、イネの育苗時に発生し多大な被害を与え、しかも防除が困難とされる、もみ枯細菌病(苗腐敗症)、苗立枯細菌病、褐条病に対し、温湯浸漬法による発生抑制効果を検討する。併せて、もみの品質と処理温度との関係を調査し、温湯浸漬処理による発芽への影響を検討する。

[成果の内容・特徴] 

  1. もみ枯細菌病(苗腐敗症)の発生抑制に対する実用的な処理法としては、60℃・10分間、および62℃・10分間の温湯浸漬処理が防除効果、発芽率からみて有効である(図1)。
  2. 苗立枯細菌病の発生抑制に対する実用的な処理法としては、57℃・10分間、60℃・10分間、および62℃・10分間の各処理が有効である(図2)。
  3. 褐条病の発生抑制に対する実用的な処理法としては、57℃・10分間、60℃・10分間、62℃・10分間、および64℃・10分間の各処理が有効である(図3)。
  4. もみの品質(品種、保存期間、充実程度)は、処理温度が高くなると発芽率が低下しやすい要因のひとつである(図4)。
  5. 以上の結果、いずれの病害に対しても60〜62℃・10分間の処理が有効である。

[成果の活用面・留意点]

  1. もみの品質が劣る(保存期間が長い、保存状態が悪い、充実不足等)場合には処理しない。
  2. 処理温度・時間は発生抑制効果や発芽に影響を及ぼすため、処理条件を遵守する。
  3. 発芽障害防止のため、処理後は直ちに冷水により冷却する。

[その他]
研究課題名:省農薬のための病害虫・雑草総合管理技術の確立
予算区分  :国補
研究期間  :平成12年度(平成11〜12年度)
研究担当者:角田 巖、中野 学、湯浅和宏

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