ベンゾイミダゾール系薬剤耐性を示すタマネギ灰色腐敗病菌の検出と防除効果
- [要約]
- ベンゾイミダゾール系薬剤に耐性を示すタマネギ灰色腐敗病菌が1999年に初めて検出された。耐性菌は淡路島内広域に分布し、タマネギ罹病株や冷蔵腐敗球から高率に分離された。耐性菌に対するチオファネートメチルの防除効果は全く認められない。
兵庫県病害虫防除所・兵庫県立中央農業技術センター 農試・環境部
[連絡先] 0790-47-1222
[部会名] 生産環境(病害)
[専 門] 作物病害
[対 象] 葉茎菜類
[分 類] 指導
-
[背景・ねらい]
- タマネギ灰色腐敗病に対して1973年以来ベンゾイミダゾール系薬剤が年数回散布され続けてきたため1978年から1994年まで薬剤感受性検定を実施したが、耐性菌は全く認められなかった(表1)。1999年頃から灰色腐敗病の発生が再び漸増傾向にあるため、その原因究明の一つとして、ベンゾイミダゾール系薬剤耐性菌の発生調査を行った。
[成果の内容・特徴]
- 最低生育阻止濃度の頻度分布調査は、検定培地にPDA培地を用い、チオファネートメチルを0.39μg/ml〜1600μg/mlの13段階の濃度で検定する。前培養した灰色腐敗病菌を検定培地に移植して、23℃で2日間培養し、菌糸の生育の有無によって判定する。検定菌株の最低生育阻止濃度の頻度分布は、1600μg/ml<と0.39μg/ml≧の両極在性を示した(表2)。この結果から、1600μg/ml<を示す菌株は耐性菌、0.39μg/ml≧を示す菌株は感受性菌と判断される。
- ベンゾイミダゾール系薬剤耐性菌の発生実態調査は、検定培地としてPDA培地を用い、チオファネートメチルを10μg/mlおよび100μg/mlの2濃度で検定する。培養条件等は頻度分布調査に準ずる。耐性菌率は、1999年産の冷蔵腐敗球からの分離菌では84.2%、2000年産の立毛罹病株からの分離菌では74.2%で、耐性菌は高い割合で淡路島の広い地域に分布していた(表3)。
- ほ場での接種条件によるチオファネートメチル水和剤の1000倍液散布の防除効果は、感受性菌に対しては認められるが、耐性菌では全く認められない(表4)。
- 全ての菌株はベンゾイミダゾール系薬剤の感受性に関係なく、ジエトフェンカルブに対して耐性を示す(表2、表3)ため、ほ場におけるチオファネートメチル・ジエトフェンカルブ水和剤の1000倍液散布の耐性菌に対する防除効果は全く認められない(表4)。
[成果の活用面・留意点]
- 大量の菌株を省力的に検定する場合、チオファネートメチルの検定濃度は10μg/ml〜100μg/mlの範囲で、2濃度か1濃度の設定で可能である。
[その他]
研究課題名:タマネギ灰色腐敗病における薬剤耐性菌防除技術の確立
予算区分 :県単
研究期間 :平成12年度(平成12〜14年)
研究担当者:西口真嗣、神頭武嗣、入江和己
発表論文等:benzimidazole系薬剤耐性を示すタマネギ灰色腐敗病菌の検出,
日植病報66:305,2000.
目次へ戻る