近紫外線除去フィルム被覆ハウスにおける天敵放飼によるトマトハモグリバエの防除


[要約]
害虫の侵入防止効果が高い近紫外線除去フィルムを被覆した施設栽培ミニトマトに寄生蜂イサエアヒメコバチを放飼すると、トマトハモグリバエに寄生して発生及び被害を抑制する。
和歌山県農林水産総合技術センター・農業試験場・病虫部  
[連絡先]0736-64-2300
[部会名]生産環境(病害虫)
[専  門]作物虫害
[対  象]昆虫類
[分  類]指導

[背景・ねらい]
 施設栽培トマトのハモグリバエ類の防除対策として、近紫外線除去フィルム(以下、UVA)被覆は侵入防止効果が高い。また天敵寄生蜂イサエアヒメコバチ(以下、ヒメコバチ)放飼による生物的防除も実用化されている。そこで両者の組み合わせの有効性および圃場におけるトマトハモグリバエの防除効果を検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. 近紫外線除去条件下ではヒメコバチの分散は抑制されるが、マメハモグリバエに対する寄主探索行動および寄生が認められる(表1)。
  2. UVA被覆ハウスのミニトマトにヒメコバチを放飼すると、トマトハモグリバエ幼虫死亡率が徐々に高まり、死亡幼虫から同ヒメコバチが羽化してくる(表2)。
  3. ミニトマトにおけるトマトハモグリバエの被害は、UVA被覆とヒメコバチ放飼によって対照区(一般農業用ビニールフィルム被覆、天敵無放飼)に比べて低く抑えられる(図1)。
  4. 以上のことから、ミニトマト促成栽培ではUVA被覆ハウスにおいてもヒメコバチ放飼によるトマトハモグリバエの防除効果が認められ、実用性があると考えられる。

[成果の活用面・留意点]                            

  1. UVA被覆はハモグリバエ類、コナジラミ類、アブラムシ類、アザミウマ類に対して侵入防止効果があり、灰色かび病の発生も抑制する。
  2. UVA被覆ハウスではヒメコバチの分散が抑制されるため、ヒメコバチは施設内の数カ所に分配して放飼する必要がある。
  3. ハモグリバエ初発生時に発生株の近くに放飼すると、UVAによる分散抑制が有効に働いてヒメコバチの定着率が高まると期待される。

[その他]
研究課題名:環境にやさしいトマトの病害虫防除技術の確立
予算区分 :国補(植物防疫推進事業)
研究期間 :平成12年度(平成8〜12年) 
研究担当者:井口雅裕、矢野貞彦、森本総子

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