夏季のキュウリハウス栽培における微小害虫の侵入経路と防虫ネットによる侵入防止技術
- [要約]
- アブラムシ類等の微小害虫は侵入高度が1m付近と低く、キュウリハウス内へは主に側窓換気部から侵入する。その対策として、側窓部に目合い0.5〜0.75oの防虫ネットを被覆すると侵入防止され、天窓換気により夏季のハウス内気温の上昇を抑えることができる。
和歌山県農林水産総合技術センター・農業試験場・病虫部
[連絡先]0736-64-2300
[部会名]生産環境(病害虫)
[専 門]作物虫害
[対 象]昆虫類
[分 類]指導
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[背景・ねらい]
- アブラムシ類等微小害虫のハウス内への侵入を防止するため、目合い1o程度の防虫ネットが使用されている。しかし、通気性が悪くなりハウス内気温が上昇するため、夏季に使用することは難しい。そこで、微小害虫のハウス内への侵入経路を明らかにし、夏季ハウス栽培における側窓防虫ネット被覆と天窓換気を組み合わせた侵入防止技術を検討する。
[成果の内容・特徴]
- アブラムシ類、コナジラミ類は、黄色粘着トラップによると、地上1m程度の低い位置を飛翔すると推察される(図1)。
- 天窓無し・側窓無被覆(以下、A棟)、天窓無被覆・側窓防虫ネット被覆(以下、B棟)、天窓・側窓ともに防虫ネット被覆(以下、C棟)の3ハウス(図2)を設定すると、アブラムシ類、コナジラミ類、アザミウマ類は、主に側窓開口部からハウス内へ侵入し、天窓換気部からの侵入は極めて少ない(図3)。
- これら害虫のキュウリにおける発生密度は、A棟に比べ、B棟とC棟では極めて低く推移し、側窓の防虫ネット被覆による侵入防止効果が高い(図4)。
- 側窓に防虫ネットを被覆するとハウス内気温が上昇するが、天窓換気を行うと7月下旬の最高気温は、A棟に比べ、B棟で平均0.6℃高く、C棟で平均0.2℃低く推移する。
- 以上の結果、アブラムシ類等の微小害虫は主に側窓部から侵入するため、その開口部に防虫ネットを被覆すると侵入が防止される。目合い0.5〜0.75oの防虫ネットを被覆しても、天窓換気を行うとハウス内気温の上昇を抑えることができる。
[成果の活用面・留意点]
- 本方法は微小害虫以外の害虫防除にも有効と思われる。
- 夏季ビニルハウス栽培において、果菜類、花き類に広く活用できる。
[その他]
研究課題名:施設栽培における物理的防除技術の開発
予算区分 :県単
研究期間 :平成12年度(平成11〜15年)
研究担当者:森本総子、矢野貞彦、井口雅裕
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