水耕栽培を利用したナス属植物の青枯病抵抗性に関する生物検定法


〔要約〕
ナス属植物の青枯病抵抗性を検定するために、人工気象室と水耕栽培法を組み合わせ、確実に感染・発病させる条件を確立した。発病株率と青枯病菌の茎内の移動度を調査することにより、短期間に抵抗性の程度を生物検定することが可能となる。
大阪府立農林技術センター・環境部・病虫室
〔連絡先〕0729-58-6551
〔部会名〕生産環境(病害虫)
〔専  門〕作物病害
〔対  象〕果菜類
〔分  類〕研究

〔背景・ねらい〕
 ナスの青枯病は難防除病害となっており、その防除に際しては、種々の防除法を組み合わせた総合防除がなされている。そのなかでも、抵抗性台木品種の利用は、重要な防除技術の一つと考えられている。しかし、青枯病菌には各種ナス属植物に対する病原性の違いが認められており、既存の抵抗性台木品種の利用に際しては汚染ほ場がどの菌系の青枯病菌に汚染されているかを調査し、導入台木品種の抵抗性を事前に調査することは防除上重要と考えられる。そこで、人工気象室と水耕栽培法とを組み合わせ、周年、短期間に検定可能となる生物検定法を検討する。

〔成果の内容・特徴〕

  1. 青枯病に感受性の高いトマトを供試して確実に感染・発病する接種条件を検討したところ、本葉5葉期のトマトを108 cfu /ml レベルの青枯病菌懸濁液中で断根接種(数秒間の浸漬)し、接種後28℃、16時間照明下の人工気象室で栽培することにより、接種14日以内で100%の感染・発病株率を認めることができた(表1)。
  2. 上記の接種条件を抵抗性を異にする各種ナス属植物に適用し、発病(枯死株率)と接種菌の茎内の移動距離を調査したところ、枯死株率と青枯病菌の茎内の移動との間に高い相関関係が認められ、各植物の抵抗性を予想することが可能と考えられた(表2)。なお、本法における病徴は土耕栽培の場合とは異なり、下葉から上葉に向かう落葉が主な病徴であった。

[成果の活用・留意点]

  1. 本生物検定は、28℃下の条件で実施しているが、30℃を越える温度条件では、抵抗性品種も罹病化することが知られているため、現地のほ場レベルでの検定結果と相関しない場合も予想される。
  2. 青枯病菌汚染ほ場における菌群の検定と抵抗性台木品種の防除効果について事前に予想することが可能となり、導入台木品種を選択することができる。

[その他]
研究課題名:培養変異の遺伝子診断による有用形質獲得体の早期選抜技術の開発
予算区分  :国補 地域先端
研究期間  :平成12年度(平成8年〜13年)
研究担当者:中曽根 渡

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