ケイ酸カリウム試薬の育苗箱灌注によるイネ苗いもちの発病抑制


[要約]
水稲の播種直後〜緑化期におけるケイ酸カリウム試薬10〜20倍溶液の0.5L/育苗箱灌注処理は、苗いもちの発病抑制効果が高い。
兵庫県立中央農業技術センター農業試験場・環境部
[連絡先] 0790-47-1117
[部会名] 生産環境(病害虫)
[専  門] 作物病害
[対  象] 稲類
[分  類] 研究

[背景・ねらい]
 近年、いもち病罹病性品種の作付け増加、育苗期の管理の不備などにより、イネ苗いもちが多発生している。しかし、登録のあるトリシクラゾール水和剤の発病後での散布では、十分な効果が得られにくい。また、環境にやさしい農業を推進するため農薬以外の防除対策が望まれている。そこで、苗いもちの発病抑制をケイ酸カリウム試薬を育苗箱に灌注処理することにより検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. 保菌種子を使用した試験で、播種直後、ケイ酸カリウム試薬を10倍希釈して育苗箱当たり0.5L灌注すると、トリシクラゾール水和剤1000倍の播種7日後灌注処理と同程度に、いもち病菌による立枯苗の発生を抑制する。ケイ酸カリウム20倍液を播種時と播種4日後にそれぞれ0.5L/育苗箱灌注すると、立枯苗は育苗後期には増加するが、二次伝染による葉の病斑数を高率に抑制する(表1)。
  2. 胞子懸濁液の噴霧接種試験で、ケイ酸カリウム20倍液を播種4、7日後にそれぞれ0.5L/育苗箱灌注すると、苗における葉いもちを無処理区の12.7%に抑制し、トリシクラゾール水和剤1000倍液の感染後の灌注処理以上の高い防除効果が認められる(図1)。
  3. ケイ酸カリウム20倍液を播種4、7日後にそれぞれ0.5L/育苗箱灌注した場合、苗の草丈、培土のpHは無処理区と同等で、土壌ECは0.3mS/cmと無施用区の2.2倍に高くなるが、生育障害は認められない(表2)。

[成果の活用面・留意点]

  1. ごま葉枯病、ばか苗病の防除のため、種子消毒は必要である。
  2. ケイ酸カリウム試薬を育苗箱で灌注した苗のいもち病抑制効果は、苗の時期だけに限られ、本田での持続効果はない。

[その他]
研究課題名:イネいもち病の防除技術の確立
予算区分  :県単
研究期間  :平成12年度(平成11年〜平成13年)
研究担当者:前川和正、相野公孝、岩本豊
発表論文等:各種ケイ酸資材の苗いもちの発病抑制効果、
          第95回日本土壌肥料学会関西支部講演会講演要旨集,27,1999.

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