イネシンガレセンチュウのピペットチップ分離法
- [要約]
- 水稲籾を鋏で縦に二分し、プラスチックピペットチップに入れ、管ビン内の水に浸漬するピペットチップ分離法では、ベルマン法に比べて、短時間で高い分離効率でイネシンガレセンチュウを分離できる。
広島県立農業技術センター・環境研究部
[連絡先]0824-29-0521
[部会名]生産環境(病害虫)
[専 門]作物虫害
[対 象]稲類
[分 類]研究
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[背景・ねらい]
- イネシンガレセンチュウの水稲籾からの分離は、これまでベルマン法(24時間)によって行われてきた。本線虫の個体群動態を研究するためには、1籾の個体数を明らかにする必要がある。そこで、ベルマン法に代わる1籾当たりの個体数調査を目的とした新しい線虫分離方法を開発する。
[成果の内容・特徴]
- ピペットチップ分離法による線虫分離効率の調査方法:水稲籾を鋏で縦に2分し、1000μlプラスティックピペットチップ(以下チップ)に各1粒ずつ入れ、水6mlを入れた管ビン(6.5ml)内に浸漬する(図1)。25℃の定温条件で2時間、4時間、8時間、24時間後に新しい管ビンに移し替え、各管ビン中の線虫をシラキュース皿に移して、実態顕微鏡下で生死別に計数する。また、処理24時間後に籾に残存した線虫およびチップ・壁面に付着した線虫を計数する。
- 鋏で縦に2分した籾50粒を用いて比較したところ、ベルマン法では、25℃の定温条件24時間で全線虫の10.8%しか分離できず、籾内で死亡した個体が多かったが(表1、図2)、ピペットチップ分離法では、2時間で全線虫数の70.0%、4時間で72.7%が分離でき、チップ及び壁面に残存しない(表1、図2)。
- 以上のように、ベルマン法よりもピペットチップ分離法の方が分離時間が短縮でき、線虫の分離効率は高く、個体数調査に適している。
[成果の活用・留意点]
- チップを管ビンからはずす際に、ピペットに息を吹きピペット内の水を完全に排除する。
- イネシンガレセンチュウ寄生個体数は籾ごとのばらつきが大きいので、調査サンプル数は1検体につき50粒以上とする。
[その他]
研究課題名:部分着色粒防除対策
予算区分 :単県
研究期間 :平成12年 (平成12〜14年)
研究担当者:星野 滋、浅井三礼
発表論文等:植物防疫 (2001)
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