土壌・施肥管理等の異なる水田からの年間の窒素・リン流出


[要約]
中粗粒灰色低地土水田における土壌・施肥管理等の異なる2圃場からの年間を通じた窒素の差引排出負荷量は、0.1,0.7kg/ha、リンの差引排出負荷量は、3.9,4.7kg/haであった。
滋賀県農業総合センター・農業試験場・環境部・環境保全担当
[連絡先]0748-46-3081
[部会名]生産環境(土壌・気象)
[専  門]環境保全
[対  象]稲類
[分  類]指導

[背景・ねらい]
 本県では、様々な分野において水質保全に向けた取り組みが展開されているが、面的発生源のひとつである農業系からの負荷軽減が一層求められている。水田から流出する窒素・リンは、水稲作付期のみでなく非作付期にも流出することが知られているが、年間を通じた調査事例は少ない。
 そこで、年間を通じて水田における窒素・リンの差引排出負荷量の実態を把握し、今後の汚濁負荷軽減対策に役立てる。

[成果の内容・特徴]

  1. 調査圃場は琵琶湖東部の平坦地にあり、土壌は中粗粒灰色低地土に属する。圃場の概要は表1に示す。
  2. 基肥に被覆肥料入り複合肥料を側条施肥したA圃場の精玄米重は、全層施肥したB圃場に比べ少なかったものの591kg/10aであった(表2)。
  3. 非作付期の土壌管理が平すき耕起の場合、地表排水量は抑制された。一方、水稲作付期は浅水代かきや田植前、中干し前の自然減水等を行うことによって、用水量の節減および地表排水量の削減が図れ、地表排水からの窒素・リンの流出が抑制された(表2図1)。
  4. 窒素の差引排出負荷量は、両圃場とも非作付期では排出型、水稲作付期では吸収型となった。年間を通じてみると、A圃場で0.7kg/ha、B圃場で0.1kg/haとなり、わずかに排出型となった(図1)。
  5. リンの差引排出負荷量は、A圃場で3.9kg/ha、B圃場で4.7kg/haとなり、土づくり資材の施用による流出量の増加は特に認められなかった。リン収支は、A圃場では-7.2kg/haであったが、土づくり資材を施用したB圃場では22.6kg/haとなった(図1)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 土壌条件や気象条件等の違いにより養分収支や差引排出負荷量に差がみられるため、データの蓄積が必要である。

[その他]
研究課題名:省化学肥料栽培のための土壌・施肥管理技術の確立
予算区分  :環境保全型土壌管理対策推進事業(国補)
研究期間  :平成12年度(平成7〜11年度)
研究担当者:徳田裕二、小森信明、岡本佐知子、大橋恭一ほか
発表論文等:なし

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