肥料の形態と量が軟弱野菜(コマツナ)の硝酸含有率に及ぼす影響


[要約]
軟弱野菜(コマツナ)の硝酸含有率は窒素施用量に比例して増加する。硝酸態とアンモニア態窒素とでは硝酸含有率に差はみられない。有機態窒素は無機態窒素に比べて施用量20kg/10aまでは硝酸含有率が少なくなる。
  兵庫県立中央農業技術センタ−・環境部
[連絡先]  0790-47-1117
[部会名]  生産環境(土壌・気象)
[専 門]  作物栄養
[対 象]  葉茎菜類
[分 類]  指導

[背景・ねらい]
 消費者の安全志向の中で、今後は一層硝酸含有率の少ない野菜が求められることが予測できる。そこで、肥料の形態と量が軟弱野菜(コマツナ)の硝酸含有率の増加に及ぼす影響を葉身と葉柄について検討した。

[成果の内容・特徴]

  1. コマツナの10株重、葉身の厚さは窒素施肥量の増加に伴い値が高まり、黄化度は逆に低下する。それらの項目は窒素形態の異なる無機3種の肥料に対してほぼ同程度の増減を示す()。
  2. 地上部の硝酸含有率は窒素施肥量の増加に伴い、著しく増加する。窒素形態の異なる無機3種の肥料に対して増加量はほぼ同程度である()。
  3. 硝酸態の窒素の増加に伴い、コマツナの株重は増加傾向にあり窒素40kg/10aで最も重い。体内の硝酸も同様に施肥量に比例して葉柄部、葉身部ともに含有率が高まる傾向にある。葉柄部は葉身部に比べて平均的に約2倍量の硝酸を含んでいるが、窒素施肥量が高まると相対的に葉柄部に対する葉身部の硝酸含有率が高くなる傾向にある(図1)。
  4. 有機態の窒素10、20kg/10a施用区は硝酸態の施用区に比べてコマツナの株重は3〜8%減少するが、硝酸含有率は20〜35%少なくなる。窒素40、60kg/10aでは両形態による株重及び硝酸含有率の差はほとんどみられない(図2)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 窒素の施用量を調節することにより、硝酸含有率の少ない軟弱野菜を生産することが可能になる。
  2. 供試した土は水田後土壌(土性LiC、pH6.58、EC(1:5)0.088mS/cm)である。有機質肥料(N:P2 O5 :K2 O=7:4:4)の主原料は動物かす粉、骨粉、植物油粕である。
  3. 吸収可能な窒素が多い土壌では、窒素施用の調節が困難であるので、クリ−ニングクロップ等で土壌の窒素量低減を図る必要がある。

[その他]                                      
研究課題名:環境負荷低減に配慮した施肥基準の策定               
予算区分  :国庫助成                                 
研究期間  :平成12年度(平成12〜16年)
研究担当者:永井耕介、桑名健夫、吉倉淳一郎            
発表論文等:なし

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