PGPR接種トウガラシ育苗用培養土のpH矯正法


[要約]
PGPRであるPseudomonas putida CA21株を接種したトウガラシの育苗に、ピートモス・パーライト混合培養土を用いる場合、Ca/Mg比の高い石灰資材でpHを6.0前後に矯正すると苗の生育が優れ、菌接種による生育促進効果が安定して発現する。
和歌山県農林水産総合技術センター農業試験場・環境保全部
[連絡先]0736-64-2300
[部会名]生産環境(土壌・気象)
[専  門]土壌
[対  象]果菜類
[分  類]指導

[背景・ねらい]
 半促成トウガラシの育苗は低温期に行われ、苗の生育遅延等の問題がある。そこで、生育促進による育苗期間の短縮、初期収量の増加等を目的として、PGPR(植物生育促進性根圏細菌)を利用するため、CA21株共生栽培に適した培養土を開発する。ここでは、ピートモス:パーライトの容積比7:3の混合培養土(以下7:3培養土)を用いる場合の最適pH及びpH矯正資材について検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. 7:3培養土を育苗に用いる場合、pHを6.0前後にするとトウガラシの生育が優れ、CA21株接種による生育促進効果が安定して発現する。そのときの石灰資材添加量は、ピートモス(カナダ産、pH無矯正)1L当たり炭酸カルシウムで2〜4g、消石灰で1〜3gである(図1)。
  2. CA21株接種トウガラシ苗の根面生菌数は、播種12日後では7:3培養土のpHに大きく影響されない。しかし、播種26日後の菌密度は、アルカリ側で高く、酸性側で低くなり、生育促進効果の発現と傾向が異なる(図2)。
  3. 7:3培養土のpH矯正に、消石灰:水酸化マグネシウムの100:0、80:20の混合資材または苦土石灰を用いるとトウガラシの生育が優れ、生育促進効果も発現する。また、そのときのSME(saturated medium extract)法抽出液は、pH5.5〜6.3、Ca/Mg比0.85〜1.9(Mg8ppm以下)である(表1)。
  4. pH矯正した7:3培養土は、多くの品種のトウガラシ、ピーマンの生育に適し、CA21株接種による生育促進効果も発現する(表2)。

[成果の活用面・留意点]

  1. pH6.0前後に矯正した7:3培養土は、生育に適した育苗用土として一般作物にも広く利用できる。
  2. 本培養土は、N、P2 O5 、K2 Oの肥料成分を含まないため、液肥施用等が必要である。

[その他]
研究課題名:作物生育調節機能を利用した有用根圏微生物と野菜の共生栽培技術
予算区分  :国補(新技術地域実用化研究)
研究期間  :平成12年度(平成10〜12年度)
研究担当者:森下年起、藪野佳寿郎、平田 滋

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