被覆尿素肥料を活用したコシヒカリの省力追肥法
- [要約]
- コシヒカリの出穂30〜35日前に4〜6kgN/10a量の被覆尿素肥料(LP70)を1回追肥することで、慣行の2回追肥法とほぼ同等の玄米収量・品質を得られ、より省力的に栽培ができる。食味は向上する傾向がある。
鳥取県農業試験場・環境研究室
[連絡先]0857-53-0721
[部会名]生産環境(土壌・気象)
[専 門]肥料
[対 象]水稲
[分 類]指導
-
[背景・ねらい]
- コシヒカリの慣行施肥法は基肥+穂肥2回の分施体系を基本としているが、経営の規模拡大等が進む中でより省力的な施肥法が望まれている。一方、基肥1回施肥法はその後の肥効調節が困難である等から、必ずしも安定した収量を得られず、普及が進まない現状にある。この折衷的な技術として被覆尿素肥料(LP70)を用いた1回追肥の省力施肥法を試験したところ、施肥法の一つとして実用性があると評価したので紹介する。
[成果の内容・特徴]
- 穂数はLP70を追肥することで、慣行より増加する傾向にある。また、LP70を早期に追肥(出穂35日前)すると下位節間長(N3〜N5)が伸長する傾向にあるが、倒伏は慣行と同程度であり栽培上支障はない(表1)。
- 窒素利用率はLP70の追肥時期が出穂30〜35日前では慣行に比べ高いが、出穂25日前では逆転するため、施肥効率の点から出穂30日前までの追肥が望ましい(表1)。
- 精玄米重はLP70の出穂30日前6kgN追肥区で慣行と同等となり、出穂30日前と35日前の4kgN追肥区では慣行に比べやや(3〜4%)低いが有意な差ではない(表2)。
- 玄米中窒素濃度はLP70追肥区が軒並み慣行より低くなり、食味推定値は慣行と同等かそれより高くなる傾向にある。検査等級には顕著な差は認められない(表2)。
- LP70を追肥した後の窒素溶出パターンは、8月中旬までは積算地温とほぼリニアに推移するが、間断かんがいを続ける8月下旬以降は停滞する傾向にある(図1)。
[成果の活用面・留意点]
- 灰色低地土対象とし、LP70は速効性肥料等とは混合せず施用する。
- 追肥時期は水稲の生育予測等に関する情報に留意の上で判断し、遅れないようにする。
- 追肥量は、地区の慣行追肥量並びにその年のコシヒカリの生育量から判断する。
[その他]
研究課題名:市場競争に強い高品質米の栽培・品質管理技術
予算区分 :国庫補助
研究期間 :平成12年度(平成8〜12年)
研究担当者:熊谷 均、高橋一郎(現鳥取地方農林振興局農業振興課)、坂東 悟(現日野地方農林振興局日野農業改良普及部)
発表論文等:被覆尿素の追肥利用によるコシヒカリの収量・品質への影響、第96回日本土壌肥料学会関西支部講演会講演要旨集、11、2000.
目次へ戻る