キャベツのマルチ栽培による施肥窒素の施用量と流出の削減


〔要約〕
マルチ栽培によって、キャベツの施肥窒素利用率を高め、土壌中に無機態窒素を保持するため、収量を低下させずに慣行基準(28kgN/10a)の3割減肥でき、圃場外への施肥窒素の流出量を花こう岩風化土壌で3割程度削減できる。
広島県立農業技術センター・環境研究部
〔連絡先〕0824-29-0521
〔部会名〕生産環境(土壌・気象)
〔専  門〕環境保全
〔対  象〕葉茎菜類
〔分  類〕指導

〔背景・ねらい〕
 広島県島しょ部沿岸地域には花こう岩由来の保肥力、保水力の小さい土壌(マサ土)が広く分布し、主要農作物の野菜は多施肥で栽培されており、肥料成分の流出による環境への負荷が懸念される。
 そこで、重窒素を用いたトレーサー法により、施肥窒素の動態に及ぼすマルチ資材の影響を検討し、キャベツ栽培の施肥基準を作成する。

〔成果の内容・特徴〕

  1. キャベツ'湖月'の収量は無マルチ慣行区に比べてマルチ3割減肥区で差がない。地上部窒素吸収量は無マルチ慣行区に比べてマルチ3割減肥区で大きい(表1)。
  2. 慣行施肥量(28kgN/10a)では、キャベツの施肥窒素吸収量は無マルチ区で11.1kg/10aであり、基肥と追肥窒素の40%を吸収し、マルチ区では13.4kg/10aで利用率は48%と無マルチ区に比べて8%高い。なお、施肥時期別では、無マルチ区の基肥窒素利用率は追肥窒素に比べて低い。3割減肥(19.6kgN/10a)処理の場合も同様である(表2)。
  3. 慣行施肥量では、無マルチ区の施肥窒素はキャベツに40%が吸収され、土壌中に16%が残存し、43%が土壌深60cm以下等に流出する(施肥窒素流出量)。一方、マルチ区ではキャベツの吸収量が無マルチ区に比べて8%高く、土壌中の無機態窒素残存量が18%高いため、施肥窒素流出量は14%と無マルチ区に比べて29%低下する。3割減肥においても、施肥窒素流出量は無マルチ区に比べて26%低下する(表3)。

〔成果の活用面・留意点〕

  1. マルチ栽培の基肥,追肥として緩効性肥料の利用が考えられる。
  2. マルチ栽培では土壌に無機態窒素の残存量が多いことから、マルチ除去は次作の植え付け直前に行い、土壌中の無機態窒素含量の測定結果に基づいて施肥する必要がある。

〔その他〕
研究課題名:土壌環境負荷低減対策推進事業
予算区分  :国補(土壌保全)
研究期間  :平成12年度(平成10〜14年)
研究担当者:伊藤純樹、岩佐直明
発表論文等:キャベツ栽培におけるマルチの有無が施肥窒素の流出に及ぼす影響、第96回土肥関西支部講演要旨、15、2000.

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