不耕起乾田直播栽培の継続がメタンの発生に及ぼす影響


[要約]
稲わらを圃場に還元する不耕起直播継続で、田面表層に有機物が集積し、土壌の還元化が進む。その結果、不耕起直播水田といえどもメタン発生量は多くなる。一方、その継続は田面上に炭素を集積するという点で、メタン発生抑制に貢献する。
                                                                 
岡山県農業総合センター・農業試験場・化学研究室        
[連絡先]0869-55-0271
[部会名]生活環境(土壌・気象)
[専  門]環境保全  
[対  象]稲類  
[分  類]研究

[背景・ねらい]
 コンバイン収穫後の稲わらを圃場に還元する不耕起直播では、有機物が表層に集積し、結果的に土壌の還元化が進むと思われる。そこで、不耕起直播継続年数と、有機物集積量及び酸化還元電位との関係を明らかにし、温室効果ガス発生に対する不耕起直播の継続の影響を知る。

[成果の内容・特徴]

  1. コンバイン収穫時に排出される稲わらをそのまま田面上に還元する不耕起直播を継続すると、有機物が作土の表面に集積し、継続8年で約17mmの厚さになる(図1)。
  2. 不耕起直播9年継続によって作土層に集積した有機物量は炭素で0.305kgm-2 である(作土0〜13cm中の不耕起直播継続水田の全炭素量−隣接耕起移植継続水田の全炭素量)。この量を二酸化炭素に換算すると9年で1.118kgm-2 となり、1年当たりでは0.124kgm-2 となる。そして、この集積した二酸化炭素による温室効果をメタンに換算(メタンは二酸化炭素の約21倍の温室効果を持つ)すると、メタン0.0059kgm-2 の温室効果に相当する量であると見積もられる。この量は山陽の不耕起直播継続7年目で実測したメタンの年間発生量 0.0385kgm-2 の約15%に相当する量である(表1)。
  3. 水田からのメタン発生量が最も多い時期は、入水後から中干し期までの期間で、この期間の酸化還元電位は不耕起直播の継続と共に低下し、5〜7年目には耕起移植との差は小さくなる傾向がみられる(図2)。
  4. 不耕起直播水田からのメタン発生量は耕起移植水田より少ないが、その差は不耕起直播を4〜5年継続すると小さくなる。そして、調査圃場は異なるが、山陽で調査した結果では7年目にはかなり小さい差になる(図3)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 水田の非湛水期間中には亜酸化窒素が発生する。その発生量は現在調査中であるので、その結果と併せて総合的に評価しなければならない。
  2. メタンの発生量は、減水深が大きい圃場では少なくなる。その場合の不耕起直播栽培のメタン発生量削減効果はさらに大きくなると考えられる。

[その他]
研究課題名:不耕起栽培における環境保全型施肥技術の確立
予算区分 :土壌保全
研究機関 :平成11年度(平5-11年度)
研究担当者:石橋英二、赤井直彦、大家理哉
発表論文 :土肥誌投稿中

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