改良シカ網による雨よけハウスおよび牧草地へのシカ、イノシシの侵入防止効果


[要約]
改良シカ網(幅3.5m)を1〜1.5mの高さにパッカーで留め、裾部分を2〜2.5mはわせることにより、ハウスおよび牧草地へのシカ、イノシシの侵入防止ができる。この網は安価で耐用年数が長く、設置も容易である。
兵庫県立北部農業技術センター・農業部、兵庫県立中央農業技術センター・農業試験場・環境部
[連絡先] 0796-74-1230
      0790-47-1117
[部会名] 生産環境部会鳥獣分科会
[専  門] 作物虫害(鳥獣)
[対  象] 野生動物
[分  類] 普及

[背景・ねらい]
 野生動物による農林業被害が増大しており、農家の生産意欲の減退を招き、なかでもシカ、イノシシ、サル等による農作物被害は深刻で全国的に大きな問題となっている。
 農作物への被害は作物の出芽期から収穫期まで全期間におよび、一度でも侵入されると致命的な被害となり、その時点で栽培を放棄する農家が増加している。現状の対策は、防護柵等に限られる。そこで、近年開発された改良シカ網を用いた雨よけハウス、牧草栽培への侵入防止効果と各種防護柵の収量評価を行った。

[成果の内容・特徴]

  1. 雨よけ栽培ハウスのホウレンソウにおいて、ハウス周囲地上1〜1.5mに改良シカ網(幅3.5m)をパッカーで留め、裾部分を2〜2.5m外側にはわせることにより、高い侵入防止効果が認められる。(図1)。
  2. ハウス周辺で多数のシカの足跡やイノシシによる掘り起こしが見られたが、ハウス内への侵入やホウレンソウへの食害は認められない。
  3. 従来のシカ網(幅 1.8m)では、上・下部からの侵入や噛み切りが多く認められるが、網を2〜2.5m外側にはわせることによる歩きにくさや、足や爪の間に網が入り嫌がることを利用した侵入防止方法である。
  4. イタリアンライグラスの牧草地への侵入防止効果は改良シカ網が最も高く、次いで電気柵、慣行シカ網の順である。(表1)。
  5. 改良シカ網は安価で設置が簡単で、緊急性があり優れた侵入防止効果が認められる。(表2) 

[成果の活用面・留意点]

  1. 裾部分の雑草管理は早めに行なう(除草剤)。
  2. 網に絡んで逃れなくなった雄ジカは危険なため特に注意する。

[その他]
研究課題名:野生鳥獣の農作物被害の防止に関する研究
予算区分  :行政対応
研究期間  :平成12年度(平成10〜13年)
研究担当者:安岡平夫、足立年一
発表論文等:地域における農作物の獣害防止研究、平成11年度近畿中国農業試験場推進会議生産環境部会・鳥獣害分科会、2000.

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