アグロバクテリウム法によるヨシへのGUS遺伝子の導入と形質転換体の作出
- [要約]
- ヨシのカルス培養系を用いて、アグロバクテリウム法によりGUS遺伝子を導入し、形質転換体を作出した。
滋賀県農業総合センター・農業試験場・先端技術開発部
[連絡先]0748-46-3081
[部会名]生物工学
[専 門]バイテク
[対 象]工芸作物類
[分 類]研究
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[背景・ねらい]
- ヨシは湖沼等の自然生態系の保全に有益な植物であることが知られており、近年、これらの植物を利用した水質浄化システムが検討されている。本システムの効率化を図るためには、養分吸収能のより高いヨシ植物体を作出することが有効であると考えられるので、遺伝子組換え技術を利用したヨシの新しい育種手法を開発する。これまでに確立したカルス培養系を利用したアグロバクテリウム法による遺伝子導入方法を検討する。
[成果の内容・特徴]
- ヨシ種子由来カルスは、ハイグロマイシン100mg/L 以上およびビアラホス2.5mg/L以上の添加培地でその増殖や再分化が顕著に抑制される。カナマイシンは、カルスの増殖や再分化に影響が認められない。
- アグロバクテリウム菌3菌株(EHA105、OPC2760、LBA4404株)を用い、ヨシカルスと25℃で3日間共存培養後、GUSトランジェントアッセイを行ったところ、EHA105株およびOPC2760株は初期感染が認められるが、LBA4404株では認められない(表)。
- OPC2760株、pMLH2113-GUSベクターを用いヨシカルスに菌濃度0.15(OD600 値)、25℃で3日間共存培養しアグロバクテリウム感染を行うと、供試したカルスのうち約10%のカルスから再分化個体が得られる(図1)。
- 得られた再分化個体について導入遺伝子の分析を行った結果から、GUS遺伝子が導入され、正常に発現すると判断される(図2、図3)。
[成果の活用面・留意点]
形質転換ヨシでは、形質転換イネと比較しX-Gluc染色の程度が明らかに弱かったことから、今後、ヨシで高発現するプロモーターを探索する必要がある。
[その他]
研究課題名:有用遺伝子導入によるヨシへの高窒素吸収能付与技術の開発
予算区分 :地域先端
研究期間 :平成12年度(平成10〜12年)
研究担当者:森 真理、宮村弘明
発表論文等:育種学研究、第2巻、別冊2号、106、2000.
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