カンキツにおけるDIG-AFLP法を利用した雌性不稔品種特異バンドの検出
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[要約]
- RAPD法より再現性が高く、シークエンサーやRIを必要とせず、より簡便なnon-RIシステムを利用したDIGーAFLP法の開発を行い、カンキツ「無核紀州ミカン」雌性不稔品種特異バンドの検出に利用する。
和歌山県農林水産総合技術センター 暖地園芸センター
[連絡先] 0738-23-4005
[部会名] 生物工学
[専 門] バイテク
[対 象] かんきつ類
[分 類] 研究
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[背景・ねらい]
- 遺伝的類縁関係が高い品種間で遺伝的多型を検出する場合、より感度の高い手法が必要である。今回材料とした「紀州大平ミカン」、「無核紀州ミカン」、「紀州ミカン」は遺伝的類似度が高く、アイソザイムでは差異が認められないと言われている。また、この3品種は形態的に類似している。しかし、「無核紀州ミカン」は雌性不稔で果実に種子ができない特性をもつ。RAPD法より再現性が高く、遺伝的多型が得られやすいと考えられるAFLP法の利用を考えたが、通常のAFLPでは、RIもしくはシークエンサーが必要である。
そこで、Vossら(1995)の方法を改良し、より簡便でシークエンサーやRIを必要としない方法として、DIG-RAPD法より再現性の高いDIG-AFLP法の開発を行い、雌性不稔に関するDNAマーカーを作成するための「無核紀州ミカン」特異バンドの検出に利用する。
[成果の内容・特徴]
- カンキツDNA抽出は5月の新葉を用い、液体窒素で粉砕後、改良CTAB法で行う。また、isogenを用いDNA抽出を行った場合、AFLPの再現性は悪くなる。(データ省略)
- 6塩基認識酵素選択プライマーの5’末端にDIG修飾を行い、AFLP反応後6%ポリアクリルアミド変性ゲル(200×400mm)で電気泳動を行い、ナイロンメンブレンフィルターに転写後、DIG発色反応(ロッシュ・ダイアグノスティック社)により多型バンドの検出を行う(図1、図2)。
- Vossら(1995)の方法で利用されていた4塩基認識酵素Mse T(TTAA)をMspT(CCGG)に変更した場合、MseTと同程度の検出感度が認められる(表1)。
- DIG-RAPD法と比較して、より多くの多型バンドの検出が可能であり、「無核紀州ミカン」品種特異的に検出される多型バンドの割合も高い。(表1、表2)
- RI施設をつくるためには莫大な費用が必要であるが、本法では全ての行程を同じ実験室で行うことができ、さらに、シークエンサーが無くても行うことが可能である。
[成果の活用面・留意点]
- DNAの精度により再現性が異なってくるので、DNA抽出法には注意が必要である。
[その他]
研究課題名:培養変異の遺伝子診断による有用形質体獲得の早期選抜技術の開発
予算区分 :地域先端
研究期間 :平成12年度(平成8〜13年)
研究担当者:花田裕美、森 泰、田部井豊(農業生物資源研究所)、萱野暁明(農林水産技術会議事務局)
発表論文など:・カンキツ無核性に関する遺伝子マーカーの探索T. DIG− RAPDおよび DIG−AFLPによる多型バンドの検出、育種学雑誌、第48巻別冊2、p.220、1998.
・DIG-RAPD and DIG- AFLP analysis of Japanese citrus cultibers, Plant and Animal genome W conference, at San Diago (1998)
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