カンキツ類のコルヒチン処理による単胚性四倍体の作出と三倍体育成への活用
- [要約]
- コルヒチン処理と茎頂接ぎ木法の併用により、カンキツ類の単胚性 四倍体を作出し、これを種子親とし二倍体を交配して得られる小粒の完全種子は、培養すると効率よく植物体に再生し、多くの三倍体が得られる。
広島県立農業技術センター・生物工学研究所・育種研究室
[連絡先]0824-29-0521
[部会名]生物工学
[専 門]バイテク
[対 象]果樹類
[分 類]研究
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[背景・ねらい]
- カンキツ類において無核性は重要な育種目標であり、その育成方法の一つとして三倍体が活用されている。これまでの三倍体作出法である♀二倍体×♂二倍体の小粒種子、二倍体×四倍体の不完全種子では作出率が低い場合が多い。一方、四倍体×二倍体は、完全種子の三倍体を生ずるが、育種素材となる四倍体、特に単胚性の四倍体は作出事例が非常に少なく、育種を進める上での障害となっている。そこで,コルヒチン処理と茎頂接ぎ木法の併用により単胚性四倍体の作出を行い、育種親として活用し三倍体育成を効率的に行う。
[成果の内容・特徴]
- 四倍体の作出はコルヒチン処理と茎頂接木法の併用(生山,1992)により行う。材料は伸長が停止した春枝を用い、えき芽を0.5mmに切り取り、コルヒチン濃度0.1%、25℃、2時間の条件で処理を行う。
- 接ぎ木後、コルヒチン処理したえき芽の14.1%が伸長する。そのうち葉が肉厚の個体を肉眼で選抜し、フローサイトメトリーにより倍数性とキメラの識別を行う。品種による差はあるが、コルヒチン処理したえき芽のうち0.5%で染色体数が完全に倍加した四倍体が得られる(表1)。得られた四倍体は開花・結実に至るまで正常に生育する。
- コルヒチン処理を行ったえき芽のうち、0.2%がキメラであり(表1)、いずれのキメラ個体も四倍性細胞が占める割合は、75%前後で類似した比率である。
- 作出した四倍体に二倍体を交配して得られる種子は、いずれの交配組合せでもほとんどが小さな完全種子であり、通常の種子の1/2以下の重量となる(表2)。
- 小粒の完全種子はMS培地(ショ糖3%,gellan gum 0.2%)で培養すると89.1%が植物体に再生し、根端細胞の染色体数を調査すると種子の重量に関係なく、またいずれの組合せでもほとんど(99.7%)が三倍体である。交配組合せにより三倍体獲得率に差はあるが、従来の方法に比べ効率良く三倍体が獲得できる(表3)。
[成果の活用面・留意点]
コルヒチン処理で得られた四倍体については、異数体の確認を行っていない。
[その他]
研究課題名:産地活性化を狙った県独自性の高いカンキツ類の新品種育成
予算区分 :県単
研究期間 :平成12年度(平成10〜22年)
研究担当者:金好純子、蔵尾公紀
発表論文等:カンキツ類のコルヒチン処理による四倍体の作出と交配親としての活用、園芸学会雑誌、第69巻別冊2、129、2000.
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